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それから1週間、俺は君と
毎日毎日 思い出を紡いだ。
小さな遊園地で 古い観覧車に何度も乗ったり、
ショッピングモールでお買い物をしたり。
草花の咲く道をあてもなく歩いて、君がその道を「ジブリ道」って呼ぶのが可笑しかったり。
雨が降った日は、映画を観に行った。映画館に行くのは、君と出会ったあの日以来の事だった。
君が大好きで止まないという、ちょっと個性的な俳優さんが出演している作品を選ぶ。〈笑って泣けて、この春感動する〉なんて宣伝文句の通り、隣の席の君は頬に涙を伝わせて、笑顔でスクリーンを見つめていた。
「この人の演技は、最高なんだ。
この作品が、俺が観る最後の彼だけど、
ずっと素敵な俳優さんであり続けると思う」
映画館の近くにあった喫茶店で、そう熱く語る君。「大我、俺の代わりに観ていてね」と言うから、今日から好きな俳優さんを訊かれたら彼の名前を答えることにした。
「…疲れちゃった、大我もう帰ろうよ、」
「うん 分かった。お会計するね」
気がつけば、少しずつ
外で活動できる時間が減っていった。
まだ太陽が高い位置にある時刻でも、君は「横になりたい」と言って、ホテルに帰ることが多くなった。
「ほくと、夕食の時間来たよ。起きられる？」
ベッドに眠る君の頭を、ぽんぽんと撫でて起こす。
ゆっくりと瞼を開いた君は、優しく笑った。
「…ｺﾎｯ、たぃが、からだ、起こしたい…」
「………ほくと？」
「へへ…声、でなくなってる」
大好きだった君の声は、転移した癌に蝕まれて、掠れた小さなものになってしまった。
「ゆっくり、いくよ」
「ん…」
更に華奢になった、君の体を
そっと支えて___殆ど俺の力だけで___起きあがらせる。
「ぁりがと、…ゆーはん、行こう…」
「北斗っ、体起こしてるのしんどいんじゃないの」
「ん…おかしぃな、お昼寝したら、大丈夫 だったんだけど…」
確実に、君の体は弱っていっている。
目の下や、掌の肌の色が、心做しか黒くなっている気がする。
「ほくと無理はだめだよ。高地先生との、やくそく」
「…そー、だね…今日は、ごはんいらない」
「うん、そうしよう。体倒そっか」
すぐに目を瞑って、寝息を立てる君。
そんな君の、頬を撫でる。
それから俺は、出発してから出番の気配も無かった、酸素ボンベの使い方を確認した。いざと言う時の、為に。
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晴(プロフ) - 名前しずくさん» あとがきまで読んでくださったんですね(^^) 2人はこれからもお互いを想いやっているはずです…！ 長らくのご愛読、ありがとうございました！ (2021年10月5日 19時) (
レス) id: 924db004c7 (このIDを非表示/違反報告)
名前しずく(プロフ) - 金平糖を贈る意味がとっても素敵で、お話にも合っているなあと感じました。今までお疲れ様でした。 (2021年10月4日 9時) (レス) @page44 id: 0ac6e112f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：晴 | 作成日時：2020年10月21日 20時
