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「大丈夫だよ」
君の頬を優しく撫でた。
やっと、北斗の顔を見てそう言えた。ほんとうに、ほんとうに大丈夫な時が来たのだ。
「もう、寂しくないよ」
「…大我がいるから?」
「そう、俺がいるから。……え、ちがうの?」
「ちがくなぁいよ。冗談っ」
くすくすと笑う君。今日からはもう、ひとりじゃないからね、ほくと。
布団の中で脚をからませあって、もっともっと距離を詰めた。俺達の間に空気が、存在できないくらいに。
「くふふっ…」
「ねぇ、北斗こんなんで照れんの?」
「だって…久しぶりじゃん」
「ぁ、キスならさっきした」
そう言ったら、また顔を赤らめる君。ほんと、照れ屋さんだなぁ。君の下唇を、甘く噛む。
「…大我だって…、寂しかったんだね」
不意に、そう言われた。
「何言ってるの」
「大我のくちびる、寂しいって震えてる。」
今度は君の吐息が、俺の口の中で広がった。
温かかった
この温度が、恋しかった
ずっとずっと、さみしかった
「ぉくと…っ」
「ねぇ大我、俺達、恋人でしょ?」
「そうだよ…、それがどうしたの…」
「ならもっと、大好きって伝えてくればよかったね。恥ずかしくて、余裕がなくて、…あと一ヶ月で一生分言うなんて、俺できる気がしないよ」
ああ、どうして泣いてるんだろう。何が悲しいのかな、…きっと運命が、悲しいんだと思う。俺と君の間に紡がれた 運命が。
「ほくとっ、…」
俺の芯が、少しずつ熱くなってゆく。
体が、君を欲して火照る。それすらも、無性に悲しかった。
「ごめんっ、少し離れたいっ…」
「…ううん、謝るのは、俺の方だから」
初めから 決めていた。
もう君と、身体を重ねることはしない、と。
一つは、君にそんな体力はもう残っていないということ。もう一つ、きっとここで君と重なり合ったら、俺はもっと悲しくなってしまう気がした。離れてゆく、その運命に押しつぶされてしまう気がした。
北斗もそれを、分かっているみたいだった。理由まで見透かされていたかは、わからないけれど。
密着していた肌が離れてゆく。
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晴(プロフ) - 名前しずくさん» あとがきまで読んでくださったんですね(^^) 2人はこれからもお互いを想いやっているはずです…! 長らくのご愛読、ありがとうございました! (2021年10月5日 19時) (レス) id: 924db004c7 (このIDを非表示/違反報告)
名前しずく(プロフ) - 金平糖を贈る意味がとっても素敵で、お話にも合っているなあと感じました。今までお疲れ様でした。 (2021年10月4日 9時) (レス) @page44 id: 0ac6e112f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:晴 | 作成日時:2020年10月21日 20時