第一章 ページ2
ほんとうに、あっという間だった。
君が、癌だと告げられてから
君の、髪の毛が抜け落ちてから
君が、みるみる痩せてゆくようになってから
君が、殆ど歩けなくなってから
君の、癌が 全身を巡ったと告げられてから
今日まで、ほんとうに。
病室に戻ると、君は体を起こして
窓の外を眺めていた。
もう冬は当に明けて 春が顔を出しているというのに
分厚い、ニット生地のカーディガンを羽織ってる。そうじゃなきゃ、きっと寒いんだろうと思う。痩せ細った その体じゃ。
「ほくと」
「んー？なに」
……何だろ、
何か言いたいのだけれど
何が、言いたいのだろう
「……ふふ、なぁに。
俺、元気でしょ？さっき余命宣告されたようには、見えないよね」
ベッドの傍にイスを置いて腰掛ける。
「見えないよ、見えないから俺…
俺 あの先生嘘言ってんじゃないの」
「嘘じゃないよ、
こーち先生、ちゃんと俺のこと診てくれてる」
「っ、ちゃんと診てくれてんならさぁ！」
……治して、よ
ぽろぽろ、涙が俺の頬を伝う。
「大我、ねえ大我」
「なにっ…」
「…さだめ、なんだよ。
決まってたんだよ、きっと。」
「そんなの……」
北斗は 俺の手を手繰り寄せた。
「大我 あのね
俺、疲れちゃった。抗うの」
「ほくと…、」
「頑張ったよね、俺
…頑張ったって、……言って」
消えてしまいそうな、そんな顔をして
北斗は、俺の手を握る。
堪らなくなって、俺は君を 抱きしめた。
こんなに痩せてしまって。
こんなに、小さくなってしまって。
「北斗は、頑張ってるよ
頑張った、じゃない。頑張ってるよ」
「っ、頑張ってる？」
「うん、頑張っているよ」
ニット帽を被った君の頭を、
ぽん ぽん、と撫でる。
「……受け入れた方が、楽になれると思う」
君は、静かにそう言った。
その声が、震えている。
俺はハッとした。
ああ俺は 君の、
北斗の気持ちを受け止めなければ。壊れてしまう前に、大切に包み込んであげなければ。
「ほくと」
ひとつ、唾を飲み込んで
君に、伝える。
「…もう、お休み、しようね」
しばらくした後、
君は、こくん と頷いた。
_____“もって後、一ヶ月”
本当に、あっという間の宣告だった。
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晴(プロフ) - 名前しずくさん» あとがきまで読んでくださったんですね(^^) 2人はこれからもお互いを想いやっているはずです…！ 長らくのご愛読、ありがとうございました！ (2021年10月5日 19時) (
レス) id: 924db004c7 (このIDを非表示/違反報告)
名前しずく(プロフ) - 金平糖を贈る意味がとっても素敵で、お話にも合っているなあと感じました。今までお疲れ様でした。 (2021年10月4日 9時) (レス) @page44 id: 0ac6e112f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：晴 | 作成日時：2020年10月21日 20時
