3月25日11:16 ページ35
翌日、昨晩高杉らに話した通り銀時はAのいる甘味処へ訪れた。
初めてこの店に訪れたあの時と同じように外の気温を感じさせない涼しげな顔でAが「また来てくれたんですね」と微笑む。
「まぁ、あんなこと言われちゃあ来ねェわけにもいかねェしな」
「ふふっ…嬉しいです」
そう言ってAは銀時の隣に腰を落ち着けた。
その行動に銀時は目を丸くして「お前、店員じゃねェのかよ」と言うが、Aはそれを気にする素振りも見せず銀時の目を見つめる。
「うちの店、お昼時にお客様が来ることは殆ど無くて。だから、おじさんもお客様が来ない限り13時頃にならないと降りて来ないんですよ」
「あ、そう…」
そう言われて店内を見回すが、確かに銀時とA以外の人影はどこにも無かった。
加えて、裏通りということもあって店の前の通りにも人影は見えない。
完全に二人きりの空間だった。
「じゃあ、Aちゃんは何でいんの」
「万が一、お客様が来た時のため……ですかね?全く来ないってこともあり得ませんし。ほら、現に銀さんがいらっしゃった」
無防備に笑うその顔が銀時の奥底にある何かに引っかかった気がした。
どこか、どこか別の場所でこんな風に笑う誰かを見た気がするのだ。
それがどこで、いつの話だったか、全く思い出せないけれど、確かに銀時はこの顔を知っていた。
「じゃあ、親父さん呼びに行かなくていーの?」
「……いいんです、私が銀さんと話したいだけだから」
そう言って微笑むAは何故か寂しそうで、ころころと変わるその表情に目が離せなかった。
銀時は「へぇ…そう」と返事して、やり場のない視線を手元に落とした。
出会って間もない女にこんな事を言われたのを怪しむべきか、喜ぶべきか、それは分からなかったが確かに銀時もAが気になっていた。
初めて見たときから、何故か頭から離れなかった。
「私、初めてこの町に来たとき…銀さんのことを町で見かけたんです」
「え?そうなの」
「右も左も分からなくて、誰かに助けて欲しくて…そんな時に銀さんが町の人を沢山助けてる姿を目にしました。色んな人から声を掛けられて、すごく、大変そうだなって」
「んな事ねーよ、仕事だし」
町で声を掛けられるのはいつもの事なので、Aの言うその日がいつなのかは銀時には分からなかった。
けれど、Aは小さく首を振って「仕事じゃなくても…銀さんはみんなを助けるじゃないですか」と呟いた。
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - えだまめンヌ。さん» 心温まるメッセージありがとうございます!私生活との兼ね合いで中々こちらにお邪魔できない状況が続いていますが、えだまめンヌ。様の言葉を励みに頑張っていきたいと思います〜! (2020年6月20日 21時) (レス) id: fbcf0daba9 (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - ↓「作品だったとは」の後に「…」を入れるの忘れてしまい変な文章になってしまいました。地味に地味ーに誤字っちゃいました笑すみません! (2020年6月18日 20時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - こんなに色々考えさせられる作品だったとは軽い気持ちで読んだのですが、もう完全にハマっちゃいました。応援しています!!長文失礼致しましたm(_ _)m (2020年6月18日 20時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - けれど、ここにきて予期せぬ展開ばかり起こっていて、ん?ん?となんとか自分なりに考察しながら読み進めています笑どんな結末になるんだろう…!?最後に話が1つに繋がってスカッとなる瞬間がくるのを今から待ち焦がれています! (2020年6月18日 20時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - えええ…。とってもとっても続きが気になります!!初めは本当に「なんじゃこりゃ?」ってなって、あとがきを読んでましろさんにしめしめと一本取られていたとわかったときは少ーし腹が立ちました笑 (2020年6月18日 20時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作成日時:2019年5月26日 21時