3月24日20:43 ページ34
「今日は絶対ェ飲み過ぎんなよ」
釘を刺すようにそう言った高杉の顔は大層うんざりとしていた。
隣に並ぶ桂も渋い顔をしている。
そんな2人を見て村塾まで運ばれた一件を思い出した銀時もバツが悪そうに「…おう」と返事した。
机上に並ぶ枝豆や冷奴、たこわさなどのつまみを口に運びながら申し訳程度のビールを仰いだ。
高杉と桂の刺さるような視線が痛く、酒が喉を通ろうとしないのだ。
「んな見張ってねぇで自分らも飲めば」
「お前が飲み過ぎると思うと酒が喉を通らぬのだ」
「俺だって野郎に見つめられちゃ飲みにくいっての!!」
ダンッ、と音を立ててジョッキを置くと高杉は「俺だって手前ェの面なんざ見続けたくねぇよ」と鼻で笑った。
「心配しねぇでも今日はんな飲まねぇよ。明日出掛けるつもりだし」
「出掛ける?珍しいな」
「まぁ、大した場所じゃねぇけどな。家に居たって暇だし」
相変わらず仕事の入らない状況を思い出し、重い溜息を吐くと高杉は口元に弧を描いて「女か」と呟いた。
どこかで聞いたような話に銀時の眉がピクッと跳ねる。
桂に関しては身を乗り出して「何だとォ!?この裏切り者めェ!!」と、これまたどこかで聞いたような反応を返してきた。
「いや、女っちゃあ女だけど女だけじゃねぇってか、目的は菓子なんだけど…でもまぁ確かに女も気になるってか、とにかく菓子はうめぇ」
「何言ってんだ?」
「俺も何言ってんのか分からなくなってきたわ」
酔っていた訳でもないが、あらぬ誤解を与えぬよう言葉を選んでいたら余計に意味が分からなくなった。
桂が「なるほど、要約すると女に会いに行ったら美味い菓子が食えた、と」と言ったので高杉が「ちげぇよ」と返した。
「その逆だ、逆。菓子食いに行ったら女が居たの。お前ら知らねぇ?Aっていう、こんぐらいの背丈の」
そう言って沖田にしたように手のひらを宙に浮かせて表現したが、2人とも首を傾げるだけだった。
甘いものに興味がないと立ち寄らないような店なのだろう。
「町で見かけることも…まぁ、ねぇよな。この町に何人女居るんだって話だし」
そう銀時が諦めたように肩を竦めると桂が「さすがに名前だけでは分からん」と顔を顰めた。
「いやでも…A……か。どっかで聞いた事がある気はするがねェ…」
「む、高杉。貴様も甘味処に行くことがあるのか」
「いや、ねぇけど。聞き覚えがあってな」
「そう珍しい名前でもねぇだろ」
そう銀時が言うと「それもそうだな」と高杉が呟いた。
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - えだまめンヌ。さん» 心温まるメッセージありがとうございます!私生活との兼ね合いで中々こちらにお邪魔できない状況が続いていますが、えだまめンヌ。様の言葉を励みに頑張っていきたいと思います〜! (2020年6月20日 21時) (レス) id: fbcf0daba9 (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - ↓「作品だったとは」の後に「…」を入れるの忘れてしまい変な文章になってしまいました。地味に地味ーに誤字っちゃいました笑すみません! (2020年6月18日 20時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - こんなに色々考えさせられる作品だったとは軽い気持ちで読んだのですが、もう完全にハマっちゃいました。応援しています!!長文失礼致しましたm(_ _)m (2020年6月18日 20時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - けれど、ここにきて予期せぬ展開ばかり起こっていて、ん?ん?となんとか自分なりに考察しながら読み進めています笑どんな結末になるんだろう…!?最後に話が1つに繋がってスカッとなる瞬間がくるのを今から待ち焦がれています! (2020年6月18日 20時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - えええ…。とってもとっても続きが気になります!!初めは本当に「なんじゃこりゃ?」ってなって、あとがきを読んでましろさんにしめしめと一本取られていたとわかったときは少ーし腹が立ちました笑 (2020年6月18日 20時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作成日時:2019年5月26日 21時