3月24日11:23 ページ31
見回りがあるというのは嘘だ。
最近は平和ボケしてしまうぐらい長閑な日々が続いていて、見回りなんてしたところで検挙率が上がるなんてことにはならない。の、だが。
「あー、そういや一件片してねぇやつあったな」
ふと思い出した一件に頭を悩ますが、こちらも大した情報がない以上手出しが出来ない案件だった。
特に急ぎの案件でも無かったことから、すぐに沖田は切り替えて馴染みの甘味処へと向かった。
まだ春だと言うのに既に我が物顔で夏のような気温を振り撒く清々しいまでの青空を睨め付けながら向かったそこには見慣れた顔があった。
「あり、万事屋の旦那じゃねぇですかィ」
「あぁ、総一郎くんじゃん」
「総悟でさァ」
会う度に毎回同じように名前を間違えるこの人は恐らく自分の名前なんぞ覚える気も無いのだろう、そう思いながら沖田は銀時の向かい側に腰を落ち着けた。
銀時とは仕事上で何度か関わった間柄だ。
普段はやる気もなく、眼差しも死んでいるようにさえ見えるのだが、剣の腕と売買する情報の正確さだけは真選組も買っていた。
とは言え、こんな平和ボケした毎日ではそう簡単に銀時が剣を振る姿も見られなかったが。
「久しぶりじゃねぇですかィ?最近あんま旦那を見かけねぇなって思ってたところでさァ」
「え?そう?俺ァあんま久しぶり感ねぇけど。前はアレか、吉原で会ったんだっけ?」
「あぁ、そうそう。そういやぁ、あん時は桂さんと高杉さんも居やしたねィ。お二人は、お元気ですかィ?」
「あー元気元気、クソ元気だよ」
面倒臭そうに適当な返事をする銀時を横目に沖田も自分の注文を済ませた。
銀時の前には抹茶パフェが置かれている。
同じ甘党としても何かと顔を合わせることが多い二人だが、銀時と自分の上司である土方の折り合いが悪いのは知っていた。
だからといって自分の交友関係まで変える必要はないのだが、沖田は沖田で銀時に対して友人とも違う親しみがあった。
少なくとも一緒に食事をして気まずくなるような関係ではない。
「あ、そういやお前裏通りにある甘味処知ってるか?すげぇ目立たねぇ場所にあんだけど、こんぐらいの女が店番してる店」
そう言って銀時は掌を掲げて女の背の高さを表した。
その情報に沖田の頭の中である一箇所が思い当たり「あぁ」と頷く。
ちょうど沖田の頼んだ団子が運ばれてきたタイミングだった。
「あー、それ5丁目のAさんでさァ」
銀時の言う女に検討が付いた沖田は団子を食べながらそう返した。
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - えだまめンヌ。さん» 心温まるメッセージありがとうございます!私生活との兼ね合いで中々こちらにお邪魔できない状況が続いていますが、えだまめンヌ。様の言葉を励みに頑張っていきたいと思います〜! (2020年6月20日 21時) (レス) id: fbcf0daba9 (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - ↓「作品だったとは」の後に「…」を入れるの忘れてしまい変な文章になってしまいました。地味に地味ーに誤字っちゃいました笑すみません! (2020年6月18日 20時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - こんなに色々考えさせられる作品だったとは軽い気持ちで読んだのですが、もう完全にハマっちゃいました。応援しています!!長文失礼致しましたm(_ _)m (2020年6月18日 20時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - けれど、ここにきて予期せぬ展開ばかり起こっていて、ん?ん?となんとか自分なりに考察しながら読み進めています笑どんな結末になるんだろう…!?最後に話が1つに繋がってスカッとなる瞬間がくるのを今から待ち焦がれています! (2020年6月18日 20時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - えええ…。とってもとっても続きが気になります!!初めは本当に「なんじゃこりゃ?」ってなって、あとがきを読んでましろさんにしめしめと一本取られていたとわかったときは少ーし腹が立ちました笑 (2020年6月18日 20時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作成日時:2019年5月26日 21時