3月23日10:28 ページ26
身体が鉛のように重たい。
深い海の底で息苦しさを感じながら揉みくちゃに藻搔いた。
「ぐ……はっ、、あ"…」
風鈴も揺れない暑さの中、伸ばした手は虚しくも空をきって、その手は生意気なガキ共に掴まれ捻られる。
「ぎんとき、おきたー!」
「イッテテテテェ!!なに、何なの!?やめろ馬鹿離せ上に乗っかるんじゃねぇ!!!」
「ぎんときうるさーい!!」
万事屋にある煎餅布団とは違う、しっかり日干しされふかふかの布団の上で銀時はまとわり付く子ども達を引き剥がした。
昨晩、飲み過ぎた自覚はあった。
「ぎんとき」「ぎんとき」と忙しなく愛嬌を振りまくその姿に毒気も抜かれた銀時は「あー、分かったからちと黙ってろ。頭痛ぇんだよ」と言ってシッシッと手を振る。
「せんせー!ぎんとき、おきたよー!!」
「だっから、うるせぇよ!!デケェ声出すんじゃねぇ!!」
銀時の膝より少し大きいぐらいの子ども達が容赦なく銀時に抱き着き、馬乗りになる。
「ぐぇ…」とくぐもった声が腹から押し出されとき、ようやく襖が開いてその人は現れた。
「おや、起きましたか」
「松陽……こいつらどうにかしろ」
恨めしげな顔に苦笑する松陽にすぐさま「せんせー!」と飛び付く子ども達の姿を見て、現金な奴らだなと銀時は溜息を吐いた。
「そんな顔しなくてもいいでしょう。子どもに好かれてるってことに変わりはありませんよ」
「いんや、どう考えても今俺よりもガキにモテてるお前にゃ言われたくねーっての」
「おや、悔しいんですか?」
「馬鹿言うな、ガキのお守りは苦手なんだよ」
と、身体を伸ばしていたら「おりゃぁ!」と容赦なく飛び乗られ、またしても「ぐぇ…」とくぐもった声が腹から出てきた。
恐らく、腰がやられた。
「ほら、銀時はまだ本調子じゃありませんし君たちは向こうで教本を読んでいなさい」
「「「はーーい」」」
元気の良い返事をして襖からぞろぞろと部屋を出て行く子ども達が口々に「またあとでねー!」「ぎんときと遊びたーい!!」「飲み過ぎんなよ」と言うものだから「うるせぇよ」と言いながら銀時は手を振っていた。
ようやく子ども達が退出し、静かになった和室で松陽が「いくつになっても君は変わりませんね」と笑う。
ちなみに、前に飲み過ぎてここで朝を迎えたのはつい1週間も前の話ではなかった。
「俺の心は永遠に少年だからな」
「もう少し大人になって欲しいものですが」
呆れたように笑う松陽が熱い茶の入った湯呑みを銀時の前に置いた。
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - えだまめンヌ。さん» 心温まるメッセージありがとうございます!私生活との兼ね合いで中々こちらにお邪魔できない状況が続いていますが、えだまめンヌ。様の言葉を励みに頑張っていきたいと思います〜! (2020年6月20日 21時) (レス) id: fbcf0daba9 (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - ↓「作品だったとは」の後に「…」を入れるの忘れてしまい変な文章になってしまいました。地味に地味ーに誤字っちゃいました笑すみません! (2020年6月18日 20時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - こんなに色々考えさせられる作品だったとは軽い気持ちで読んだのですが、もう完全にハマっちゃいました。応援しています!!長文失礼致しましたm(_ _)m (2020年6月18日 20時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - けれど、ここにきて予期せぬ展開ばかり起こっていて、ん?ん?となんとか自分なりに考察しながら読み進めています笑どんな結末になるんだろう…!?最後に話が1つに繋がってスカッとなる瞬間がくるのを今から待ち焦がれています! (2020年6月18日 20時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - えええ…。とってもとっても続きが気になります!!初めは本当に「なんじゃこりゃ?」ってなって、あとがきを読んでましろさんにしめしめと一本取られていたとわかったときは少ーし腹が立ちました笑 (2020年6月18日 20時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作成日時:2019年5月26日 21時