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3月27日15:12 ページ16

それからというもの、銀時はAのいる甘味処に通うようになった。

深い意味などない。
ただ、何となく。

「今日も来てくれたんですね」
「相変わらずガラガラだな」

ひどいです、とAが口を膨らませたものだから思わず笑ってしまった。

この店に通うようになって分かったことがある。
一つは沖田が言っていたように知る人ぞ知る、なかなか新規の客が入らない店であるということ。
顔を合わせるのはいつも同じオヤジかガラの悪い若者ばかりで、人相の悪い客ばかりかのに誰も彼も甘いものが好きな奴ばかりだった。

もう一つは、この店には店主の親父とAしかいないこと。
決して客入りの良くない店なので他に店員など要らないのであろう、いつ来てもAが店の中でにっこりと笑って待っていた。

Aは沖田が言ったようにそこそこに可愛くて変な輩に絡まれるようなこともなく、至って平凡に生きてきたという感じの女だった。
この町に来た詳しい経緯などは知らないが、どうやら元々はもっと遠くの町にいたらしく、かぶき町に来たのはつい1年前のことだったらしい。

銀時は銀時でAのことを知りたいと思った訳でもなく、ただ、一緒にいて息苦しさを感じない、不思議と安堵感を覚える存在だと思っていた。

「嫁にするなら、こういうタイプだよな」
「え?銀さん、お嫁さんが欲しいんですか?」
「あ?別に何もねーよ」

銀時の独り言に首を傾げながらAは柏餅の乗った皿を銀時の前に置いて奥へと消えて行った。

互いに詮索し合うこともせず、同じ空気を吸って同じ時間を過ごす。
穏やかな時間だけがこの店には流れている。

あぁ、だから居心地がいいのか。

銀時は一人でに小さく笑った。
例えば何かしらの物語があったとして、そこにとある男女が登場したとする。

大きなアクションなんて何もない。
ただ、隣にいるだけで初めからそうであったかのように、パズルのピースがぴたりと嵌ったかのようにしっくりくる。

それは、物語として面白みはないのかも知れない。
穏やかなだけでは物語は始まらないし終わりもしない。

けれど、人生において始まりと終わりは否が応でも訪れるものである。
それならば、人生は穏やかであるべきではないのか。

「あのさー、Aちゃん」

店の奥から返事は聞こえない。
けれど構わず銀時は続けた。

「今度、どっか行こーぜ」

その言葉にAが今まで見せなかった表情で飛び出てきたものだから思わず銀時は笑っていた。

3月29日23:31→←3月24日11:26



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設定タグ:銀魂 , 坂田銀時   
作品ジャンル:恋愛
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - えだまめンヌ。さん» 心温まるメッセージありがとうございます!私生活との兼ね合いで中々こちらにお邪魔できない状況が続いていますが、えだまめンヌ。様の言葉を励みに頑張っていきたいと思います〜! (2020年6月20日 21時) (レス) id: fbcf0daba9 (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - ↓「作品だったとは」の後に「…」を入れるの忘れてしまい変な文章になってしまいました。地味に地味ーに誤字っちゃいました笑すみません! (2020年6月18日 20時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - こんなに色々考えさせられる作品だったとは軽い気持ちで読んだのですが、もう完全にハマっちゃいました。応援しています!!長文失礼致しましたm(_ _)m (2020年6月18日 20時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - けれど、ここにきて予期せぬ展開ばかり起こっていて、ん?ん?となんとか自分なりに考察しながら読み進めています笑どんな結末になるんだろう…!?最後に話が1つに繋がってスカッとなる瞬間がくるのを今から待ち焦がれています! (2020年6月18日 20時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - えええ…。とってもとっても続きが気になります!!初めは本当に「なんじゃこりゃ?」ってなって、あとがきを読んでましろさんにしめしめと一本取られていたとわかったときは少ーし腹が立ちました笑 (2020年6月18日 20時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作成日時:2019年5月26日 21時

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