【HQ】国見くんをからかいたい。【国見英】

からかいたい、にじゅうはち ページ29

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「いや、急に何の話」


「んー……まあとりあえず行こ！」



私は眉をひそめる国見くんの手を取って、歩いてきた廊下をダッシュで戻った。

階段を上がって、奥へと進む。そしてある扉の前で走るのをやめた。流れる沈黙。先に破ったのは国見くんの方だった。



「あのさ、朝礼始まるけど……」と困惑する国見くんに私は首を傾げて笑った。



「……国見くん。私と一緒に逃げない？」



聞き覚えあるその台詞を私が口にすれば、国見くんは「ハァ」とため息をついて私の頭を軽く指で弾いた。


「馬鹿なんじゃなかったのかよ」


「馬鹿でもいいよ。国見くんと話したいもん」


「あっそ」


ふい、とそっぽを向く国見くんにくすっと笑って私はドアノブに手をかけた。扉を開けた瞬間、ふわっと感じる爽やかな風と澄み切った春の空気。



「後で絶対怒られるやつじゃん」


「国見くんとなら別に良いかな」


「俺は嫌だよ」



そう、私たちは屋上にやってきたのだ。そんな雑談をしながら、私はフェンスにもたれかかって「……あのね」と口を開いた。


「国見くんは悪い人じゃないよ。国見くんはいつも私に優しくしてくれて、バレーも頑張ってて、とっても良い人だよ」


国見くんは私の言葉にぎゅっと顔を顰めて、吐き出すように言葉を重ねた。



「……バレーで、トスを上げたやつを無視しても？無視して、傷つけて、追い出した。それでも良い奴って言えんのかよ」


「言えるよ」


柔らかな風が国見くんの髪を揺らして。
私は手を伸ばして国見くんを抱きついた。

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