【SUPERLOVERS】孤独な仮面

episode.6 ページ7

〜貴方side〜

春子の部屋を出てから俺は外に出て、昔よく登っていた木へと向かった。









家の裏に行くと、その木は昔と変わらず大きく、高く、自分の存在を主張するように凛々しく立っていた。









俺はその木に近づき優しく触れる。








「ただいま」








その一言を言ってから、木に登り真ん丸な満月を見る。









やっぱりココからみる月が一番綺麗だ・・・









そして、ふと春子との会話を思い出す。









『お前には明日から日本へ行ってもらう』((ﾆﾔｯ









きっと春子にも考えがあっての事だとは分かっている。









あの人は優しい人だから、









分かっていても日本へは行けない。









「そういえば・・・」









7年前、晴この木の下で寝てたよな。









未だ、どうして居たのかは謎だが、俺もあの時は流石に驚いた記憶がある。









他にも、晴と言い合いになった時も此処で仲直りしたし、晴にリスを取って見せてやったのも、この木だ。









あとは・・・









いや。まて・・・









「俺、何思い出してんだよ」









昔の思い出を振り返る自分に、その思い出が全て晴が関係していることに今更気づいた俺は、木から降り、家へと戻った。









俺の中に残る楽しい記憶、









悲しい記憶、









嬉しい記憶、









辛い記憶、









全部が全部、晴が絡んでいることだと、









「どうして、俺は変わったはずだろ・・・」









スイスでの１年間







気を抜けば蘇る記憶を閉じ込めるため、俺は勉学に励み、周りの期待に応えた。









それは、ハーバードに行った1年半だってそうだ。









研究所とは違って学生という立場で、年齢や国籍の違う相手とコミュニケーションを取るため、俺は誰よりも優秀で誰よりも完璧な人間になった。









それは周りも認めている。









そうだ









俺はこの２年半、晴のことを思い出さないよう、ずっと別の何かに力を入れ、









晴では与えられないモノを手に入れた。









そうだ。









そこまで言葉を並べてからふと気づく。









前へと進む足が止まる。









「なんだよ、どれもこれも、全部晴が・・・」









晴が関係してるじゃないか・・

episode.7→←episode.5

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す