御伽噺�� ページ18
「いつまでこっちに？」
「明日にはもうドイツに帰るよ。ずっと家開けとけんし」
「なにー、同棲でもしてるの？」
なんでふざけて返したことを少し後悔する。
「…うん」
拓磨の方を見れなかった。
動揺する私も、そんな立場じゃないのに。
「なんて、猫やで。ひとりじゃ寂しいし飼い始めた」
「あ、そうなんだ。なら心配だしすぐ戻らないとね」
安心している私が嫌になる。
目の前にあるアイスコーヒーをストローで混ぜた。
高校時代のころの話、お互いの家族の話、なんてことない会話をしていた。
「誰にもらったん？指輪」
拓磨がまた指輪について触れてきた。
「…自分で買ったんだよ、可愛いでしょ？」
私は自分が嘘をつく時に耳を触る癖がある、なんて事をこれから先も知ることは無い。
なぜこんな嘘をついてしまうのか自分でもよくわからなかった。
何かが変わるわけでもないのに。
「…そっか。あ、氷なくなってもうた」
「そろそろ出る？」
会えたのはほんの少し、私の憧れはまた遠い所へ行ってしまうんだな。
「…ガムシロ入れるのは男らしくないんやと」
帰るつもりでいた私は拓磨がふとこぼした言葉に動きを止める。
「って、猫がな」
そう言って拓磨は俯きがちに笑った。
その表情からは何を思っているのか読み取れなかった。
「……私はそういうとこが、好きだったけどな」
「…そっか」
私は何を望んでいるのだろう。
拓磨は何を思っているのだろう。
拓磨が伝票を持って席を立つから私も後を追った。
「…結婚するん？」
2度目の同じ会話。
「ちゃんと左手につけてやらなあかんよ」
振り返りながら拓磨が言った。
きっと私の事なんてお見通しなんだろうな。
「…うん」
「おめでとうな」
なんの曇りのない笑顔の拓磨に私は苦笑いしか返せなかった。
変わってしまったんだろう、変わってないこと以上に。
私の気持ちも彼の気持ちも、この街の景色も。
私は右手にあった指輪を左手の薬指へと付け替えた。
あの真っ黒いアイスコーヒーにこれを沈めてしまえば良かったのだろうか。
会計を済ませて2人で外へ出る。
別れの時間はもうすぐそこ。
「じゃあ、元気でな」
「うん、拓磨もね」
私に背を向け拓磨が歩き出す。
きっとさっきまでのこの時間は、憧れの存在を消せずにいた私への神様が許した時間なのかもしれない。
「…拓磨！」
きっと誰の愛を受けても消えないだろう。
あの御伽噺には続きがあってね。
たとえ何千年経っても会えるんだよ。
「またね」
私は左手で手を振った。
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りょー(プロフ) - 葉瑠さん» ありがとうございます！全然大丈夫ですよ🫶🏻暇なときに書いてくださると嬉しいです！ (2023年1月4日 15時) (
レス) id: 499d00a8f3 (このIDを非表示/違反報告)
葉瑠(プロフ) - りょーさん» はじめまして！板倉選手ですね！お時間いただくと思いますので気長にお待ちいただけたら嬉しいです…！ (2023年1月4日 11時) (レス) id: 392653f59f (このIDを非表示/違反報告)
りょー(プロフ) - はじめまして！4番の板倉選手のリクエスト可能でしょうか、？シチュエーションはなんでもかまいません！ (2023年1月4日 11時) (レス) id: 499d00a8f3 (このIDを非表示/違反報告)
葉瑠(プロフ) - マイメロディさん» お待たせしております！まずは田中選手のお話しを書いてみました！気に入ってもらえたらなによりです🙏他のリクエストもお待ちください☺️ (2023年1月4日 10時) (レス) id: 392653f59f (このIDを非表示/違反報告)
葉瑠(プロフ) - ひーな@キーテイちゃんさん» またよろしくお願いします☺️ (2022年12月29日 23時) (レス) id: 392653f59f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葉瑠 | 作成日時：2022年12月7日 18時
