ご近所付き合いはじめました。【Fischer's】

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話し終わった頃には、頼んだカフェオレのグラスに水溜まりが出来ていた。
随分長いこと話しちゃったんだな、まほっちゃん本当に忙しいのに。
気まずさ故に黙り込んでしまっていると、正面からため息が聞こえた。

ﾏﾎﾄ「……A」
『なに？』
ﾏﾎﾄ「お前、俺ん家来ねえ？」
『………………ん？』

俺ん家に、来ないか、って。
それって。

まほっちゃんの家、ってこと？()

『えぇぇぇぇぇぇぇぇええ！！？』
ﾏﾎﾄ「別に今の俺なら、お前一人ぐらい養えるし。これ以上、俺の知らねぇところで変な傷負わせたくねぇし」
『でも……！まほっちゃんはいろいろ知名度が半端じゃないし、私やっておばあちゃんと一緒に住んでるから私一人だけまほっちゃんとこでお世話になんのも……』

この突拍子も無い提案が、彼の最大級の優しさなのは分かってる。にしたって、リスクは高いし問題も多い。

でも。まほっちゃんは。

ﾏﾎﾄ「あー……なら部屋借りるか？俺の家から近いとこでどっか……あ、お前今バイトしてんの？」
『へ？あー、うん』
ﾏﾎﾄ「じゃあそれも即やめ」
『ねぇほんまにちょっと待ってくれん！！？』

問題なんて見えてもいないように、あっという間に道を切り開いて。多くの人が憧れるのも分かる。だって彼は、当たり前のように眩しくあり続けられる人だから。

ﾏﾎﾄ「ぷっ……あはははは！！」
『へ……？ちょ、なに……？』

尊敬の思いが浮かび上がってきたタイミングで相手から吹き出し笑い。なに怖い。

ﾏﾎﾄ「お前おばあちゃん譲りのその喋り方、ほんと直んねぇなーって」
『あ……いや、バイト先とかマサ…………ご近所さんと話すときとかはちゃんと普通の標準語やし！！』

からかわないでよ、と呟きながらカフェオレに手を伸ばす。うわ、めっちゃ氷溶けて薄まってる。もったいないことした気分。

ストローで勢いよく喉に冷たさを流し込んでから、ふと目の前が静かになったことに気づく。

顔を向けると、ばっちり合う視線。

ﾏﾎﾄ「その、ご近所さんか」
『なにが』
ﾏﾎﾄ「お前が今、すっげえ楽しそうなのは」
『……今この瞬間は、まほっちゃんのおかげやけど？』
ﾏﾎﾄ「あーはいはい。そういうことは軽く言わないのー」

やっぱり凄い、まほっちゃんは。
これはもう近々、ご近所さんがYouTuberさんな事を話さなきゃいけないかな。

その時の事を想像しながら、もう一度カフェオレを流し込んだ。

ある一人からの目線に、勿論気づかずに。

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