漆 ページ38
佐々城の襲撃の事は敢えて云わなかった。彼女はまだ魔法省の監房にいるらしい。もし云えば、この片割れは病み上がりの身体を引き摺ってでも彼女を抹殺しに行くに違いない。これが冗談で済まされないのが怖いところだ、何せ彼には前科がある。
けれど…この力に確信を持てたのは、矢張り佐々城の存在が大きいだろう。あの時、彼女に鎌をかける機会がなければ私は治を助けられなかった。
あの時、私が血の滴る拳を構えた途端に彼女の挙動は一変した。つまり、力を秘めているのは私の血そのものなのだ。
それを呑ませれば彼女の魔力も消失してしまうだろうと踏んだ。魔法を無効化出来るなら当人の魔力もまた消失出来るだろうと思ったからだ。ぶっちゃけそのあたりは完全に賭けでもあったんだが…。
そして私はこうも推測を立てた。
＿魔法を無効化出来るというのなら、魔法薬の効能を無くす力もあるんじゃないのか？
もうこれしか術はない。少なくとも試す価値はある筈だ。そうして今に至る。
私はその推測を掻い摘んで治に話した。彼は興味深そうに耳を傾けてくれたので話し甲斐が十二分にあった。話し終えると興奮冷めやらぬといった調子で口を開いた。
「…そうか、通りで口の中で鉄の味が充満してるわけだね」
私の先程感じていた高揚感も一瞬で冷えてしまった。
「…ごめん。漱ぐ？」
そういえば血液は飲むと有毒なのだと聞いた事がある。血を飲まされて喜ぶなんて、確かに吸血鬼くらいだろうな…。私が水を取りに行こうと腰を上げた時、何か強い力で引っ張られた。余りに力強かったものだから、治の身体の上にまで倒れ込んでしまった。まあ、私の腕を引っ張ったのが彼本人だったのだけれど。
「いらない。それよりもう少し、ここにいてよ」
「…勿論。離れたりしない。決して」
私は治の寝間着をまとった身体を、薫じた。消毒の匂いがして、それがどこまでも私を落ち着かせた。それに彼が私の頭を撫でてくれた事も相俟って。
それから私は、治が眠っていた間に起こった様々な出来事を語ってみせた。
彼がいない間、森邸の寝台が大きすぎてなかなか寝付けなかった事や、独歩がいじめっ子から守ってくれた事、ラドヤード先生から飛び級の確定申告を受けた事。その際、先生が頭を撫でてくれた事。
そして…これは直前まで報告するのをためらったが、矢張り云う事にした。
「…治。私、また中也に命を救われたよ。これで二度目だ」
私の頭を撫でる治の手が、止まった。
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サラ(プロフ) - しぇるふぃあ。さん» こんな細かい描写にも気づいて頂けるなんて物書き冥利につきます！消せませんよ、でもここでは説明し切れないので後日改めて説明させて頂きますね! (2018年12月13日 20時) (
レス) id: 4e09bde857 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - しぇるふぃあ。さん» お久しぶりです。しぇるふぃあ。さん、すごく読んで頂いているようなのでとても嬉しいです、ありがとうございます。 (2018年12月13日 20時) (レス) id: 4e09bde857 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。 - ところで夢主ちゃんは前世が国語教師なのですよね？だったら41pに出てくる安吾さんの名前は知ってるはず…と違和感を覚えました(・・?) はっもしや伏線？ネタバレに触れるようでしたらこのコメントはそっ消ししてくださいm(_ _)m これからも陰ながら応援してます!! (2018年12月13日 19時) (レス) id: a3aac3bf63 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。 - お久しぶりです！しばらく顔を出せなかった間にすごく進んでて一気読み不可避でした…あんまり好きポインツ語るとコメ欄ネタバレになるので控えますが仲直り本当に良かったです(ネタバレ) (2018年12月13日 19時) (レス) id: a3aac3bf63 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - 紫苑さん» 応援ありがとうございます!頑張らせていただきます！ (2018年12月2日 23時) (レス) id: 4e09bde857 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：サラ | 作成日時：2018年9月20日 12時
