肆 ページ35
「それにしたって不思議だな。僕死んだと思ったのに」
治は自分の眼球をキョロキョロ動かしながら云った。彼の冗句に一瞬ヒヤリとさせられたが、今回の彼の行動の切っ掛けは主に私にある。私が彼を咎められる事はない。
「…私の力なんだ」私は最早隠す気など無かった。
「驚いた。じゃあAはシシ神なの？」
「そしたら私は奇蹄類という事になるよ」
私は冗談を冗談で返したものの、また内なる恐怖が再燃した。
「ねえ教えてよA。僕らの間で隠し事は無し。そうでしょう？」
「…判らない」
私の声が内包する昏い響を、この聡い片割れが感じ取れないわけもなく。
治はいつになく真剣な面持ちで私の目を捉えた。
「皆が、話してくれると思った。でも駄目だった。校長も副校長も私の力については仄めかしただけだったし、山本先生は何一つ教えてくれなかった。結局導き出せたのは一つだけだ…」
その時、その瞬間だけは、私が世界を左右しているような感覚だった。誰も息をする事を許されていない、私の許可を得るまでは誰一人として。
「私は魔法を使えない。同時に誰も私に魔法をかける事が出来ないんだ」
まるで誰も寝てはならぬと命じられたかのように。
「私は魔法使いどころか非魔法族ですらない、何かそれ以外の…異端者なんだよ」
…治の顔が見れない。
私は矢継ぎ早に云った。
「それにこの世界で息吹いた時からずっと、君に隠していた事がある。
…治、私は本当は、�狢精�A�瓩世韻犬磴覆い鵑澄�
舌が上手く動かなかった。呼吸すら真面に出来ない。
「…�狡電臠�智子�瓠Ａ阿寮こΔ任呂修Ω討个譴討い拭�私は、何故かこの世界で二番目の生を受ける事になった…異質な魂なんだ」
「…」
私はここまでで、治から一時も目を逸らさなかった。逸らしてはならないという事は誰にでも判った。
私はもう逃げたりしない。自分の運命から。
「…」
治は瞬きすらしなかった。冗談だろうと笑いとばしたりもしなかったし話についていけないと当惑したりすらしなかった。
…軽蔑されてもいい。罵倒されたって構わない。
だって私は、今までずっと保身のために君を騙し続け、保身のために利用してきたんだから。
何なら死の呪いをかけられたって…
「…何それ」彼がやっと口を開いた。
私のそれと同じ大きさの掌が眼前に迫る。思わず私はギュッと目を閉じた。
パン！
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 42人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
サラ(プロフ) - しぇるふぃあ。さん» こんな細かい描写にも気づいて頂けるなんて物書き冥利につきます！消せませんよ、でもここでは説明し切れないので後日改めて説明させて頂きますね! (2018年12月13日 20時) (
レス) id: 4e09bde857 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - しぇるふぃあ。さん» お久しぶりです。しぇるふぃあ。さん、すごく読んで頂いているようなのでとても嬉しいです、ありがとうございます。 (2018年12月13日 20時) (レス) id: 4e09bde857 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。 - ところで夢主ちゃんは前世が国語教師なのですよね？だったら41pに出てくる安吾さんの名前は知ってるはず…と違和感を覚えました(・・?) はっもしや伏線？ネタバレに触れるようでしたらこのコメントはそっ消ししてくださいm(_ _)m これからも陰ながら応援してます!! (2018年12月13日 19時) (レス) id: a3aac3bf63 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。 - お久しぶりです！しばらく顔を出せなかった間にすごく進んでて一気読み不可避でした…あんまり好きポインツ語るとコメ欄ネタバレになるので控えますが仲直り本当に良かったです(ネタバレ) (2018年12月13日 19時) (レス) id: a3aac3bf63 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - 紫苑さん» 応援ありがとうございます!頑張らせていただきます！ (2018年12月2日 23時) (レス) id: 4e09bde857 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：サラ | 作成日時：2018年9月20日 12時
