弐 ページ24
(また、助けられたな…)
私は首絞めから解放されて、せき込みながらも太宰少年に感謝した。
佐々城は悶えながら、右目を抑えている。血が止まらないらしい、畳にボタボタ赤黒い雫が落ちた。
私は簪を素早く拾ってから、開いたままだった扉の向こう側、廊下へと駆け出した。廊下には人っ子一人見当たらなかった。そもそもここが袋小路のようなところにあるからだ。
(ラドヤード先生は一体、どこに飛ばされたんだろう？他の教室の児童生徒はきっともう大広間にいるんだろうな…助けは来ない)
復讐には絶好の好機と捉えるべきだろうに、私はそんな気持ちには更々なれなかった。
(畜生、あの女があんな目をするからだ。あんな目をされたら＿)
あの目を、私はどこかで見た事があった。どこでだかは思い出せない。
ピュン！「うわっ！」
地面についていた方の足が、いきなり地面から離れる。そして身体が一回転した後に地面に叩き付けられた。痛みを無視して何があったのか確認すると、私の走っていた床にクレーターのような大きな穴が空いていた。五
(コンフリンゴだ…)
無言呪文で繰り出されたから、どの呪文を喰らわされたか、正確には判らない。ただ一つ判った事がある。
(こいつ、厄介だな…！)
相当な使い手だ、非魔法使いの私では手も足も出ないに違いない。
つい先刻まで復讐してやるなどと意気込んでいたのが噓のように、私は臆していた。
「随分と、姑息な手段でしたね…ご尊父とは程遠い＿」
(どうする、どうしたら＿！)
私は痛む身体を叱咤し、すぐにその場を離れようと…途端に、ずきりと片足が傷んだ。思わず足を確認すると、そこは赤くなっていた。
(こんな時に捻挫でもしたのか？！)
先刻身体を強かに打ち付けた時だろう。冗談じゃない。こんな足では碌に逃げられないだろう。
「もう終わりですね、残念ながらもう
その云い方を聞いて、私はまた後悔した。手元の血で濡れた簪を見た。
(太宰少年、私も君を守れる妹になれたら良かったのに…)
私の今生は後悔ばかりらしい。こんな、最期の最期まで後悔ばかりしていた。今更になって最大の後悔をした。
(もっと、君と生きたかった＿もっと笑い合えたら＿)
佐々城が杖を、振り上げた。
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サラ(プロフ) - しぇるふぃあ。さん» こんな細かい描写にも気づいて頂けるなんて物書き冥利につきます！消せませんよ、でもここでは説明し切れないので後日改めて説明させて頂きますね! (2018年12月13日 20時) (
レス) id: 4e09bde857 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - しぇるふぃあ。さん» お久しぶりです。しぇるふぃあ。さん、すごく読んで頂いているようなのでとても嬉しいです、ありがとうございます。 (2018年12月13日 20時) (レス) id: 4e09bde857 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。 - ところで夢主ちゃんは前世が国語教師なのですよね？だったら41pに出てくる安吾さんの名前は知ってるはず…と違和感を覚えました(・・?) はっもしや伏線？ネタバレに触れるようでしたらこのコメントはそっ消ししてくださいm(_ _)m これからも陰ながら応援してます!! (2018年12月13日 19時) (レス) id: a3aac3bf63 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。 - お久しぶりです！しばらく顔を出せなかった間にすごく進んでて一気読み不可避でした…あんまり好きポインツ語るとコメ欄ネタバレになるので控えますが仲直り本当に良かったです(ネタバレ) (2018年12月13日 19時) (レス) id: a3aac3bf63 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - 紫苑さん» 応援ありがとうございます!頑張らせていただきます！ (2018年12月2日 23時) (レス) id: 4e09bde857 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：サラ | 作成日時：2018年9月20日 12時
