＊ ページ9
.
静かなリビングに、そんなに上手くない司会の声と上っ面だけの笑い声だけが響くのはなんだか空虚しい。久々にゆっくりできる時間なのになぁ。ちらりと横から様子を伺うも、瞳はテレビの画面を写したまま。表情なんて伺えなかった。
そうして、彼氏にすっかり放っておかれて拗ねた私は、猫と遊ぶことを決意した。
まず、膝の上で寛ぐ猫の喉を指先で擽る。猫特有のごろごろと鳴く声と、掌に擦り寄る小さな頭がとても愛らしい。可愛い。…超絶可愛いな。調子に乗って撫でていれば指先を舐められた。ざらざらとした感触に耐えられなくて擽ったいと呟く。いつか猫を飼うのもいいなあ、ゾムは許してくれるかなぁと、考えたところで絶賛喧嘩中(？)だったことを思い出す。
気まずいのに、これから先のこと。しかも、本当に有り得るのかわからないことを考えるなんて結構おめでたい頭してるな私。…うん。やっぱり、ちょっぴり、悲しい。…ほんと、嫌われてたらどうしよう。顔を出した不安はむくりと膨らみ続けるばかりだ。
ぼんやりと考えていたら、膝の上の重みが急に消えた。
「え」
目の前にはいつの間にか横から侵入してきた掌。どうやら、猫の首根っこを掴んで床へと降ろしてしまったらしい。寂しいからひと時の癒しを求めていたのに、それすら取られたことに流石の私も腹を立てた。文句を言おうとしたところで、今度は隣のゾムの姿が消えて、再び膝には重みを感じた。でも、横を見ると猫は私の傍に居る。なんでだ。
疑問に思って視線を下すと、
「…え」
緑の双眸と目線が合った。膝の上に居るのは猫じゃなくてゾムの頭のようだ。
そこで今のこれが所謂膝枕という物に気が付いた。
「ちょっと、ゾム。何して、」
「膝枕」
「いやわかるけど！」
問いかける私の声は上擦っているのにも関わらず、ゾムは白々しく私の問いを躱す。すっかり私の頭はパニックだ。え、なんで。
と、すぐ目の前からにゃあと声がした。
「…なんや、諦めの悪い奴やなあ」
理不尽にもゾムに降ろされた白猫が何かを訴えるようにゾムを見つめていた。気づいたゾムはごろりと体を猫の方に向ける。結果私には背中を向けているのでその表情はわからないものの、その声は少し苛立っている気がした。
そうして、見つめ合って数秒、白猫は私の傍を離れてドアの隙間から別の部屋へと消えてしまった。え、なんで。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 182人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ももね(プロフ) - りんごさん» ありがとうございます！喜んでくださったようでうれしく思います。私自身も「お友達から始めませんか、」は特にお気に入りのお話でしたので続編を書くのはとても楽しかったです！この度はリクエストありがとうございました！ (2020年5月14日 22時) (
レス) id: 2fa0c60296 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - ももねさん» ももね様！リク消化ありがとうございます！もう好きすぎて言葉に表せないくらい好きです！ももね様！本当にありがとうございました！愛してます！ (2020年5月13日 22時) (レス) id: ed57538bc3 (このIDを非表示/違反報告)
ももね(プロフ) - 天真爛漫さん» ありがとうございます！天真爛漫さまのご希望に添えたなら幸いです。今後ともよろしくお願いします！ (2020年5月8日 10時) (レス) id: 2fa0c60296 (このIDを非表示/違反報告)
天真爛漫 - 作者様、素敵な作品を書くてくださり、ありがとうございました！！ (2020年5月6日 21時) (レス) id: 545c0410b5 (このIDを非表示/違反報告)
ももね(プロフ) - りんごさん» はじめまして！コメントありがとうございます。ありがとうございます…！好きなフレーズを題名にさせてもらいました！^^リクエスト承りました！執筆が完了次第投稿させていただきます。よろしくお願いします！ (2020年5月3日 23時) (レス) id: 2fa0c60296 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ももね | 作成日時：2020年4月13日 19時
