【d!】恋って言うから、愛に来た【短中編集】

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数時間して楽しい合コンの場はお開きになった。少し離れた場所で、まだ楽しそうに談笑するふたりを見かける。

スマホを取り出して、トーク画面を開く。そのまま送ってもらいなよ、と打ち込むとすぐに気が付いた彼女がスマホを取り出したのが見えた。

文章の横に直ぐに既読がついて、恥ずかしがる兎のスタンプがひとつ表示された。それから今夜の合コンへの感謝の気持ちが綴られていく。別にいいのになぁ、と思いながらも少し照れ臭い。頑張れよ！と返信すれば、照れ臭そうにする兎のスタンプとじゃあまた月曜日にという言葉が届いて、会話は終わった。

スマホの画面を暗くして、残りのメンバーを眺める。どうやら鬱先生を筆頭にあの彼も含めて二次会をするらしい。鬱先生お持ち帰りするとか言ってたけど捕まらなかったのかなぁと笑っていれば、ねえと一番聞きたくない声が直ぐ傍から聞こえ背筋が震えた。

振り向くとあの男が傍らに立っていて、馴れ馴れしく腰に手を回されている。帰ったと思ってたのに、油断してたと唇を噛み締める。

尚の事この後の予定を持ち掛けてくる男に、今まで我慢していたことも相まって腹が立ってくる。今度こそ足でも踏んでやろうかと思って、足を振り上げたときに男がいる反対側から腕を引っ張られた。
バランスが崩れ、倒れると思っていたらそんなことはなく。私は誰かに寄りかかっていた。
顔を見上げると彼が、そこに立っていた。


「すまん、大先生。やっぱもう帰るわ」
「おん、わかった。また今度よろしく頼むで」
「…はいはい」


遠くにいる鬱先生とそんな会話を交わした後、それじゃ行こかと。掴んでいた腕から手を離し、今度は自然な流れて手を繋がれた。そのまま歩きだしてしまうものだから、なにがなんだかわからない私は結局連れて行かれるまま。

しかし声を掛けられぬまま、無視された男の声が聞こえてくる。その時繋がれていた手とは反対側の腕に触れられた気がして、やばいと思った瞬間。横から凄い力で引き寄せられた。

また大きな体に支えられ、今度は守るかのように抱き締められていた。ふと、顔を見上げて。





私は、絶景を見た。



「自分、ほんましつこいで。いい加減にせえよ」


後を追いかけてきた男を、居酒屋に居た時よりもっと鋭く射抜く瞳。瞳の奥の赤はひどく凍てついていた。この視線に今度こそすっかり怯えた様子の男は夜の街の人混みへと走って消えた。

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