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第1話 ページ1

*


「神谷はいるかー?」


日誌を書いていると
突然教室のドアが開き担任が入って来た。

先生はキョロキョロと教室を見渡して
隅にいる私を視界に入れる。



「なんだ、もう加野一人か」

「どうかされたんですか?」


しまった、と思った時にはもう遅くて。


「あー、悪いけどこれ神谷に渡しといてくれるか」






2年の4月から
同じクラスになった野球部の神谷くんは
周りと比べて肌が黒く、背も高いため
クラスでは結構目立っていた。

彼より30センチほど背が低い私は
大きな神谷くんが少し怖くて
ほとんど話したことがなかった。


そもそも、神谷くんは
私のという人間の存在にすら
気付いていないかもしれない。


周りはきらびやかなグループばかりで
私が属してる?3人グループは
教室の隅でキラキラな人たちから距離を置いた、
いわば地味グループだった。

そのため、名前を忘れられていることが多い。


だからきっと私が神谷くんの届け物をしたら
彼は驚くんじゃないだろうか。

クラスにこんな子が居たんだって。




初めて足を踏み入れる野球部のグラウンドに
ドキドキしながら神谷くんを探す。

大きいからすぐに見つけられるんじゃないか
と思っていたけれど、他の部員も大きくて
同じ練習着に同じ帽子を被っているため
どれが神谷くんなのかわからない。


まあ、わざわざ本人に渡さなくても
そこにいる部員に渡せばいいか。と
思ったところで



「あれ…?加野さんじゃん」


不意に後ろから声を掛けられた。

野球部に知り合いなんていたかな、と
恐る恐る振り向けば
神谷くんが物珍しげに私を見下ろしていた。


まさか、神谷くんが私の存在を…
私の名前を覚えていてくれてたなんて。



「誰かに用か?」

「あっ…えと、神谷くんに…」

「え?俺?」



目をパチクリさせる神谷くんに
先生から、とノートを差し出せば

「なんだ、差し入れじゃねぇのか」
と、苦笑いを浮かべながら言った。



「ご、ごめんなさい…」

「あー、いや。届けてくれてありがとな」

「帰り道だから…」



こうやって対面して話すのは初めてだから
なんだか恥ずかしくて顔を上げることができなくて
神谷くんの表情が見れない。



「帰るの?」

「…え?」

「俺、これから打つんだけど」


打つ?


頭を傾げる私に
神谷くんはグラウンドを指して言う。


「初めて来たんだろ?
せっかくだし、練習見て行かね?」



予想もしなかったお誘いに
頭で考えるより先に小さく頷いていた。

第2話→



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設定タグ:ダイヤのA , 神谷カルロス俊樹   
作品ジャンル:恋愛
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もっちー(プロフ) - 続きが楽しみです!!更新待ってます🙌💖💖 (8月27日 2時) (レス) id: 28f73aa9c2 (このIDを非表示/違反報告)
名無し52551号(プロフ) - 続きが気になっています! (2021年1月5日 23時) (レス) id: 990a644328 (このIDを非表示/違反報告)
ポン酢(プロフ) - 何回も読み返して、いっぱいときめかせてもらってます!!更新たのしみにしてます! (2017年12月10日 21時) (レス) id: 1aaa9be303 (このIDを非表示/違反報告)
ユミヤミ - 更新お願いします (2017年8月27日 11時) (レス) id: f8c960a3cf (このIDを非表示/違反報告)
れい - 待ってました!更新頑張ってください (2017年8月22日 23時) (レス) id: 78b913d76d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あんず | 作成日時:2017年3月2日 17時

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