ハッピーシンセサイザ３【マサイ】 (ページ23)

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マサイside ページ23

マサイside

「マサイにお願いがある。」

上目遣いでお願いしてくるA。

「とりあえず、話を聞こう」

なんでも聞きたいが、無茶振りの可能性もあるため
すぐに了承してはいけない。

「アルバムなんだけどね。曲数的に恋愛系を解禁して欲しいらしくて」

「いいんじゃないの？」
Aはまだ恋愛系の曲を一回も出した事がない。
さすがにアルバムに入れるなら必要だろう。

Aがパソコンのフォルダを開き、俺の方に向ける。

「どれなら出していいか、選んで欲しい」

ずらっと並ぶタイトル。およそ２０ほど。

「…俺が選ぶの？」

「だってマサイとの事しか歌ってないよ？ファンの人にはわからなくても、他のメンバーには分かっちゃうから」

「…全部俺の事？」

「だってマサイしか好きになった事ないんだよ？」

嬉しいが、複雑だ。俺との出来事が日記のように歌われているのだろうか？

「データ共有するから、聞いておいてくれる？
大丈夫そうなのがあったら教えてほしい」

「…わかった。ちなみにいつまでだ？」

「全部ボツなら作り直すから、年内にお願い」

あと１０日ほどだ。出来るだけ急いで聞かないといけない。

Aがデータの共有をすませ、「今日は家で寝るから、マサイもゆっくり休んでね？」と帰宅の準備を始める。

「あ、もし寝る時寂しかったらうちに来てもいいよ？」

「いや、昨日の今日だし、ゆっくり体休めてくれ」

さすがに体が辛いだろう。
上の階まで送ると、触れるだけのキスをして自宅に戻る。

パソコンの共有フォルダを開き、一曲目から再生していく。

まるで悲鳴のような失恋曲
離れても笑顔でいてくれと幸せを願う曲
一緒にいる時の温かさを謳った曲
これからの２人の幸せを願う曲

全てが俺に対するAの気持ちだ。

全曲聴き終えた俺はAの家に向かう。