FILE.67 ページ19
.
零さんは、拒否する様子は見せずに私の右手に自分の手を重ねた。
今更すぎるけれど、こんな朝っぱらから私達はリビングで何をしているのだろう。と言ってもふっかけたのは私の方で、完全に私が悪いのだが。
コナンくんも博士も、洗面台の方に行っていてこの空間に二人きりだ。
甘くて大人な色気を含んだ彼の瞳が、私を映して揺れている。どこか、切なさを感じるような。
どうしてそんな顔をするの…？
「…A」
「っ！」
不意に呼ばれた私の名前。
呼び捨てな辺りから察するが、完全に安室透ではなく降谷零のそれで。
溢れて止まない愛しさが、ギュッときつく私の胸を締め付けた。これ以上好きになんてさせないで欲しいのに。
彼はどうやら許してくれないみたいだ。
「零、さん……」
そんな顔で、見つめないで。
思わず口に出してしまいそうだったその言葉は、音になること無く呑み込まれた。
ガチャ、と開いた扉の音によって。
「ふぁぁあ…おはよーさん…」
大きな口を開けて欠伸をしながら、入ってくる。私達は咄嗟に離れて、平然を装った。
なんだかこのパターン多いな、助かったと言えば助かったのだが。
でも、やっぱり…残念だったかもしれない。
「お、おはよう服部くん！よく眠れた？！」
「おはようございます、お水用意しますね」
服部くんは、私達の様子に困惑しながら「…おう？頼むわ」と返事をした。
ソファに腰掛けた彼が、私を手招きして呼び寄せる。その傍によると眉を寄せて小声気味に尋ねてきた。
「……俺、なんか邪魔してしもたか？」
「う、えっ？！あっはは、冗談やめてよ！全然そんなことないから！」
「じゃかぁしい！何のために呼び寄せたと思ォとるんや！」
図星だった焦りから、大声で話してしまった。
服部くんが小声で私を怒っているのだが、こちらに向ける眼光が鋭いです。ひょえ。
「アッ、ごめん…」
「ほんなら、まぁ…違うならええけど」
しおらしくなった私を見て、小さく笑う。
それで終わりかと思って気を緩めると、最後に服部くんは爆弾を投下した。
「秘密にしとるんならもっと上手くやらなあかんで♡」
「なっ、だから！！服部くん！？！」
ケラケラと笑って言ってのけた。コナンくんには気づかれてないというのに、服部くんはあの雰囲気だけで察したというのだろうか。
水を持ってやって来た零さんに、どうかしたかと問われたが、言えるはず無かった。
と言うか、完全に私の片想いである事を察してください。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 561人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
天桜＊(プロフ) - 雪菜さん» はじめまして！コメントありがとうございます！返信が遅れてしまい大変申し訳ありません；；私生活が忙しく更新出来ていなかったのですが、こんな世情なので更新再開しようと思います…！お待たせしてしまいましたが、頑張ります！ (2020年4月19日 12時) (
レス) id: 8e54424fc3 (このIDを非表示/違反報告)
雪菜(プロフ) - この作品を最近見つけたんですが、凄いハマりました！続き待っていますね！頑張ってください！ (2020年2月4日 1時) (レス) id: 7ae7374779 (このIDを非表示/違反報告)
天桜＊(プロフ) - 環希さん» はじめまして！コメントありがとうございます！お気に召していただけたようで幸いです…！！期待に添えられるよう頑張りますので、今後とも応援のほどよろしくお願いします！ (2019年9月1日 8時) (レス) id: 4b54fd1f63 (このIDを非表示/違反報告)
環希(プロフ) - はじめまして！逆トリップの検索から来たのですが、とても面白くて私が求めていたものにピッタリです！更新頑張ってください！楽しみに待っております(^^) (2019年9月1日 2時) (レス) id: 33d5659616 (このIDを非表示/違反報告)
天桜＊(プロフ) - EMIRIAさん» はじめまして！ありがとうございます〜！！そう言っていただけて本当に嬉しいです；；更新お待たせしていて申し訳ないのですが、是非これからもよろしくお願いします！頑張ります！ (2019年8月31日 5時) (レス) id: 4b54fd1f63 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
