金曜日 ページ9
平日の夜、10時過ぎ。
諸々の家事を終えて、コーヒー片手にテレビを眺めていた。
チャンネルを変えながらぼーっと見ていると、急に画面に映った旦那の姿にびっくりした。
賑やかなトーク番組で、画面の彼は楽しそうに笑っている。
少しカメラが引かれて、端っこにちらりと見えた亮の左手の薬指には、控えめな、でもキラリと光る銀色の指輪。
そんなことには随分慣れたけれど、やっぱり嬉しくなる。
少し冷めたコーヒーを飲み干したところで、ガチャリと鍵が開く音がした。
「ただいま〜」
『おかえり』
彼は洗面所から出てくると、ソファーにいる私の隣に座って、膝を枕に倒れこむ。
「つかれた…」
膝にある重みも、伝わる体温も、全てが亮のもので胸が締め付けられるような感覚がする。
愛しくて、たまらない。
『お疲れ様、亮』
髪の毛に指を通すように頭を撫でていると、ごそごそと彼が動いて目が合った。
この体制だと、自然と亮は上目遣いになる。
ふ、と至近距離で微笑むその顔には、いつまでも耐性がつかない。
「Aのそれ、好き」
私の手を取ってそう言った。
…こんなに幸せでいいの？
仕事終わりで疲れて帰ってくると、子供みたいに甘えたがりになる。
テレビじゃ見れない亮のそんな素を、今私が見ている。
私だけが知っている。
こんな気持ちも何もかも、彼から貰ってばかりだ。
いつの間にか旦那さんはよそ見をしていて、これ俺が出てる番組だー、とか言っていた。
その気の抜けた姿が、テレビの中のキラキラした亮とは全く違う。
『ねぇ、亮？』
「んー？」
こっちを向いたタイミングで彼の目を手で覆って、そっと唇を重ねる。
私が手を退けるより、亮が掴んで剥がす方が早かった。
「め、珍しいね、A」
『…そう？』
元々大きな目を更に見開いて、驚いたように、でも嬉しそうにじっと見つめてくる。
自分でやっておいて恥ずかしくなってきたので、彼から顔ごと目を逸らした。
忘れよう、私はなんて大胆なことを…
「…ねぇ、A？」
『……』
…これは、振り向いたらだめなやつ。
数秒の沈黙。
もう私が振り向かないと思ったのか、彼は起き上がり、私の顔を両手で挟んでキスをした。
『な、』
「先にしてきたのはAだからね？」
さっきとは打って変わって、亮はにやりと悪い笑みを浮かべていた。
金曜日の夜は長い。
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麦(プロフ) - 游さん» ありがとうございます〜！今回の更新もかなり日が空いてしまってすみません…。感想もいただけてとっても嬉しいです！更新は、どうか気長にお待ちください！(*´∀`) (2021年12月23日 8時) (
レス) id: c17c33a14a (このIDを非表示/違反報告)
游 - こんばんは(*^^*) 夜分遅くにすみません｡｡｡ かなりお久しぶりです。 更新ありがとうございます。 物語読みました。 続きが気になります。更新待ってますね。 (2021年12月14日 0時) (レス) @page35 id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
麦(プロフ) - 游さん» ありがとうございます！ご指摘の部分は全て修正したと思います！苗字の表記の所、単純に私のミスでした…すみません。タイトルの「再開」はわざとで、「再会」との掛詞です！紛らわしくて申し訳ないです…。ご丁寧にありがとうございました！更新も頑張ります(*´∀`) (2021年8月11日 21時) (レス) id: c17c33a14a (このIDを非表示/違反報告)
游 - 物語短編で読みやすかったので一気に読んじゃいました。 続きが気になります。 更新待ってますね。 (2021年8月11日 2時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
游 - 物語読んでいて気が付いたのですが。。。 ○ページ23のここの部分 「(名字)」とここの部分 名字)に話しかける口実が欲しくて、授業では寝たふりをして彼女を見ていた。 これも名字が無くて名字表記なのですが｡｡｡ (2021年8月11日 2時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：麦 | 作成日時：2021年4月11日 21時
