○ ページ23
.
何度も、同じ夢を見る。
中学の授業の最中で、隣の席に彼女が座っている。
俺は寝たふりをしながら、こっそり彼女の方を見ていた。
真剣な目で黒板を見つめて、ノートに視線を落とす仕草が、
彼女が、好きだった。
それはやけにリアルな夢で、目覚めたとき一番に見える白い天井で、いつも現実に引き戻される。
そして、決まって、涙が出る。
自分の一途さには自分でも感服している。
リビングにある黒い本棚の二段目。
桜の表紙に金色で文字が書いてある、中学校の卒業アルバムを手に取った。
個人写真のページに彼女はいない。
二年の思い出、というタイトルの二ページに詰め込まれた写真に目をやる。
教室の様子と、体育祭の二枚に彼女が写っていた。
写真にノートを書く姿が残っていて、彼女が左利きだったことを思い出す。
もう一枚では、赤い鉢巻きを揺らしてムカデ競走をしていた。
…他の人は、こんな細かいところまで見ることなんて無いと思うけど。
決して大きく写っている訳でもないのに、彼女の姿だけははっきり捉えられた。
「A」
一体何年ぶりに、ちゃんとその名前を呼んだのだろう。
今まではそんなこと出来なかった。
声に出してしまえば、ただ、虚しくなってしまうから。
記憶を辿って、繰り返し見る夢の続きを思い出す。
寝てたからノート貸して、と同じ嘘を繰り返し言っても、彼女はいつも貸してくれた。
あまりに優しいから、一瞬両想いなんじゃないかと期待したときもあった。
でも彼女が優しいのはみんなに対してだと知っていた。
だからそんなはずない、と、妄想は何度も打ち砕かれて。
…嘘、気づいてたのかな。
Aに話しかける口実が欲しくて、授業では寝たふりをして彼女を見ていた。
「…A、」
ずっと、そう呼びたかった。
一見狭そうに見える世界はとてつもなく広い。
会いたい人に偶然会えるほど、上手く出来てはいない。
転校してから、もし一度でも俺の名前を思い出してくれたのなら。
それほど幸せなことはないと、思う。
A。
夢の後は、無性に君に会いたくなる。
どうしようもない、恋をしている。
172人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
麦(プロフ) - 游さん» ありがとうございます〜!今回の更新もかなり日が空いてしまってすみません…。感想もいただけてとっても嬉しいです!更新は、どうか気長にお待ちください!(*´∀`) (2021年12月23日 8時) (レス) id: c17c33a14a (このIDを非表示/違反報告)
游 - こんばんは(*^^*) 夜分遅くにすみません。。。 かなりお久しぶりです。 更新ありがとうございます。 物語読みました。 続きが気になります。更新待ってますね。 (2021年12月14日 0時) (レス) @page35 id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
麦(プロフ) - 游さん» ありがとうございます!ご指摘の部分は全て修正したと思います!苗字の表記の所、単純に私のミスでした…すみません。タイトルの「再開」はわざとで、「再会」との掛詞です!紛らわしくて申し訳ないです…。ご丁寧にありがとうございました!更新も頑張ります(*´∀`) (2021年8月11日 21時) (レス) id: c17c33a14a (このIDを非表示/違反報告)
游 - 物語短編で読みやすかったので一気に読んじゃいました。 続きが気になります。 更新待ってますね。 (2021年8月11日 2時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
游 - 物語読んでいて気が付いたのですが。。。 ○ページ23のここの部分 「(名字)」とここの部分 名字)に話しかける口実が欲しくて、授業では寝たふりをして彼女を見ていた。 これも名字が無くて名字表記なのですが。。。 (2021年8月11日 2時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:麦 | 作成日時:2021年4月11日 21時