再会、再開 ページ17
＿行かないで、なんて、あの時素直に言えていたなら。
今の二人は、違っていたのだろうか。
.
出勤前、コンビニでコーヒーを買うのが私の日常。
今日はいつもより早い電車に乗ったから、毎日同じ車両に乗る人たちとは顔を合わせなかった。
いらっしゃいませ、とバイトの声がする。
『……』
涼しいコンビニに足を踏み入れた瞬間、目を疑った。
なんでいるの？
彼はスーツを着こなして、何か難しそうな本を読んでいる。
一年前に別れた元彼だった。
不意に彼が本から目を離してこっちを見そうになったから、慌てて逃げてしまう。
反対側にある商品棚へ、サンドイッチを探すふりで身を隠した。
暴れていた心臓は、しばらくするとだんだん落ち着きを取り戻した。
もう、気にしたら負けだ。
早く買うもの買って帰ろう。
投げやりな気持ちになって、でもやっぱり彼を気にしてしまいながらレジへと向かった。
『ホットコーヒーお願いします』
店員さんにそう言ってカップを貰い、セットしてボタンを押す。
…ばれてないのかな？
彼に背を向けて立って、コーヒーが注がれるのを見つめる。
彼は、もう私を忘れているかもしれない。
…私が振ったんだ、亮を。
ずっと好きだった。
でも、亮には好きな人ができていた。
私ではない、誰か。
湯気のたつコーヒーを取り出して、足早に出口へと歩く。
コツコツと低いヒールが音を立てる。
「…お願いします」
後ろから懐かしい声が聞こえる。
私はもうコンビニを出てしまった。
声をかけてくれるかな、とか。
何故かほんのちょっとだけ、期待していた。
照りつける太陽が体温を上昇させる。
自分勝手だと、自分でも分かっていた。
振ったのも自分から。
逃げたのも自分から。
それなのに。
また話したいと、思ってしまった。
.
レジで会計を済ませているとき、コンビニの自動ドアが開いて温い風が吹き込んできた。
その温度に少しげんなりして、なんとなく出口の方へと視線を向ける。
結われた黒い髪が揺れている。
背筋の伸びた、少し小柄な女性。
「A…」
後ろ姿で分かった。
彼女はどんどん遠ざかっていく。
お金を払ってレジ袋を受け取る。
出口へ急ぐ足が、一瞬、躊躇した。
でも、またすぐに動き始める。
随分遠くへと離れてしまった距離は、縮まっていく。
いつの間にか駆け出していた。
今でもずっと好きなままの、彼女へ向かって。
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麦(プロフ) - 游さん» ありがとうございます〜！今回の更新もかなり日が空いてしまってすみません…。感想もいただけてとっても嬉しいです！更新は、どうか気長にお待ちください！(*´∀`) (2021年12月23日 8時) (
レス) id: c17c33a14a (このIDを非表示/違反報告)
游 - こんばんは(*^^*) 夜分遅くにすみません｡｡｡ かなりお久しぶりです。 更新ありがとうございます。 物語読みました。 続きが気になります。更新待ってますね。 (2021年12月14日 0時) (レス) @page35 id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
麦(プロフ) - 游さん» ありがとうございます！ご指摘の部分は全て修正したと思います！苗字の表記の所、単純に私のミスでした…すみません。タイトルの「再開」はわざとで、「再会」との掛詞です！紛らわしくて申し訳ないです…。ご丁寧にありがとうございました！更新も頑張ります(*´∀`) (2021年8月11日 21時) (レス) id: c17c33a14a (このIDを非表示/違反報告)
游 - 物語短編で読みやすかったので一気に読んじゃいました。 続きが気になります。 更新待ってますね。 (2021年8月11日 2時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
游 - 物語読んでいて気が付いたのですが。。。 ○ページ23のここの部分 「(名字)」とここの部分 名字)に話しかける口実が欲しくて、授業では寝たふりをして彼女を見ていた。 これも名字が無くて名字表記なのですが｡｡｡ (2021年8月11日 2時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：麦 | 作成日時：2021年4月11日 21時
