カースト1位《桃》 (ページ5)

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４話ページ5

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　思い立ったが吉日、とはよく言ったもので。その日の学校が終わると同時に親友に引っ張られてやってきたのはオシャレな美容院。綺麗にまとめられた内装、置かれた観葉植物、美容師さんの人当たりの良さがかえって陰気臭い私の不安を煽った。

「もうこの鬱陶しい前髪とか思いっきり切っちゃってください！髪は全体的に毛先重めのゆるふわ系で、あと垢抜けの雰囲気が出るカラーリングも！」

(全部あなたのプロデュースかい)
　心の中でツッコミつつ美容師さんに「お願いします」とか細く言えば、おまかせあれと言ったように笑った。そして親友の要望通りにジャキジャキと遠慮なくハサミが入れられていく。ちょ、ちょっと切りすぎじゃないかな。
　この両耳が嫌な音を拾う度、少しの恐怖に駆られる。噫、やっぱり急にイメチェンなんてするんじゃなかった。明日にはきっとみんなに笑われるんだ。お前にそんなの似合うもんかって。そうに違いない。でも

『なんだ、可愛いじゃん』

　うーんダメだ。先輩の何気ない一言が頭にこびりついている。私はこれからどうすればいいんだ。明日の朝、学校のトップとも呼べる京本先輩に笑われるなり馬鹿にされるなりすれば(そんな人じゃないだろう、という希望も持ちたいけど)おそらく私はまともな精神で生きていけないだろう。どうしよう、どうしよう。
　なんてぐるぐる思考を巡らすうち、今日一日の疲れにガタが来てしまったのか、いつの間にか眠りについてしまった。

「……A！終わったよ、起きて！」
「へぁ」

　眠りこけておとぼけモードになった脳を急スピードでフル回転させる。私の髪型チェンジは終わったらしい。目を開けて鏡を見れば、慌てて目を見開く。

「……だ、誰……！？」

　黒髪お下げから一変、淡い茶髪のゆるふわハーフアップに変身していた。無造作に腰まで伸ばしっぱなしだった髪は胸元で揺れ、前髪も眉の辺りで真っ直ぐ切り揃えられていた。

「これ、私？」
「そうだよ！やっぱA可愛いわ〜！」

　満足そうに頷く親友。オシャレな美容室での高価な代金を全て彼女が支払ってくれた。申し訳ないと慌てて財布を出すものの、森本くんとの恋路を応援してキューピットになってくれるならチャラにしてやるとのこと。こんなに優しい女の子なら、森本くんだって好きになってくれると思うな。