やわらかな午後に遅い朝食を【短編集】 (ページ10)

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なんか手持ち無沙汰になっちゃった。お菓子でも作ろうかな。もうこんな夜だけど、そんな夜があってもいいと思う。なんて正当化しながら彼の好きなチョコを湯煎で溶かしていく。
今の彼は泥じゃなくてチョコかな。熱されすぎて溶けちゃったんだ。そしたら私が型に流し入れて冷やしてあげたい。

そんなことを考えながら黙々とガトーショコラを作ってた。私が作業する音だけが響く部屋で、｢彼が居る｣という事実だけが私の心をほぐしてくれる。寝てるのに。寝てたって彼の安心感ってすごいんだな。

照｢、、A、、？｣
｢ひーくん。起きたんだ｣
照｢ん、、、いーにおい、｣

寝室からぬっと出てきた彼は、もうどろどろじゃない。でも寝起きの彼はちょっとちっちゃい。こんなに大きい身体なのに。可笑しく聞こえるかもだけど、ほんとにちっちゃくなっちゃうの。

後ろから彼の腕に閉じ込められる。心地よい強さと寝起き独特のぽかぽかとした体温が伝わってくる。

照｢ずっとねてたわ｣
｢ね。ぐっすりだったから起こしちゃ悪いなって思って｣
照｢うん。よくねた。｣
｢帰ってきたらひーくんいるからびっくりしちゃった｣
照｢え、、あ、連絡してなかったか。ごめん。｣
｢んーん、びっくりしたけど嬉しいよ。会えると思ってなかったときに会えると嬉しいね｣

そう言うと、ふっと笑ったと思ったら私から離れてオーブンで焼いてるガトーショコラを覗きにいった。照れたのか、単にガトーショコラが気になったのかはわからない。その後頭部がなんだかたまらなく愛しくなった。

あなたの形を確かめさせて