やわらかな午後に遅い朝食を【短編集】 (ページ38)

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Sweet dreams * Shota.W ページ38

夜寝ていると、隣の気配に若干目が覚めた。ほとんど寝てるけど、意識の片隅で隣で寝ているはずのAが動くのを感じる。どうやらベッドを出たらしい。気にはなるけど、それでもやはり眠気に勝てず、体の欲求に身を預ける。

少しだけ沈んだらまた意識が戻ってくる。さっきよりははっきり、かといって起きたかと言われるとそうではない。自分がどれくらい眠りについていたのかわからないが、体感的にそんな長くはないはず。隣にはまだ彼女はいないのも、それを証明している。

寝室の向こうにかすかな足音が聞こえてきた。真夜中特有の静けさの中ではどんな小さな音も気配も感じ取れる。

ベッドに戻ってきたAはふーっとため息をひとつ吐いた。

翔｢…なに、｣

｢ぁ、ごめん起こした、？｣

翔｢…ぃや、べつに、｣

さらりと動く彼女の綺麗な長い髪にドキッとしてしまって、言葉が出てこない。こういうとき、気の利いたことを言えたらいいのにと自分でも思う。

翔｢どうかしたの、｣

｢…ん？｣

眉を上げて聞き返す彼女。ほんとはちゃんと聞こえているのに、困ったときや都合が悪いときには聞き返してはぐらかそうとするのは、強がりな彼女の癖だ。

翔｢どうかしたのって｣

｢…大丈夫｣

ほら、答えになってないって。ちっぽけな嘘もつけないくせに甘えようともしない。
普通に目覚めてきちゃったし、ここは確実に何かあったであろう彼女を甘やかしてあげよう。