やわらかな午後に遅い朝食を【短編集】 (ページ32)

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これを愛と呼ぼう * Ren.M ページ32

仕事終わり、数時間前にメッセージを送った画面を開く。夕方に終わるから会えないかという趣旨のメッセージに、既読はついているものの返事は来ていない。他愛もない話をしているときには彼女もたまに返信を忘れることはあるが、質問とかには見た時点で返信をするはず。単に忙しいだけなのかもしれないが、彼女らしくない対応に少し胸騒ぎがする。

蓮：おーい

これで気づいてくれるならそれでいい。忘れてしまったことに関してとやかく言うつもりはないし。そんな俺の思いもむなしく、送った瞬間につく既読の文字。

蓮｢、は、？｣

どういうことだ？トーク画面が開きっぱなしってこと？寝てんのかな。

電話もしてみる。出ない。彼女は基本音が鳴らないように設定しているから電話に出ないのは珍しいことじゃないけど、今回ばかりは引っかかる。

蓮｢Aー…？｣

仕事場から彼女の家に直行した。リビングに向かいながら控えめの声で彼女を呼ぶが返事はなし。閉めきった空間にこもった空気のせいか、じわりと汗が出てくる。

リビングには彼女はいない。寝室を覗いてみるか。視線を下げるとソファーの影から小さな足。

蓮｢うおっ！…え？｣

回り込むと、ラグに彼女が転がっている。着替えもせず、帰ってきたまんまの格好。パンプス用の浅いソックスだけが脱ぎ捨てられている。手元にはスマホ。俺のトーク画面を表示している。

蓮｢Aさーん｣

彼女の肩に触れると、慣れない熱さがじんわり伝わってくる。首元を触って疑いが確信に変わった。

蓮｢ね、A？起きれる？｣

かわいそうだけど、一旦起こさないと。どれくらい熱があるのか、いつからなのか、どういう経緯でここに転がっていたのか、もし意識がないなら病院に連れていかなきゃいけないかもしれない。焦ってはいるが、自分でも驚くほど思考回路は働いているらしい。

｢ん…？れん…？｣

蓮｢、よかった、意識あるね｣

｢んー…｣

蓮｢A熱ある。ベッド行こっか｣

寝起きと熱ではっきりしない彼女を抱えてベッドに運ぶ。熱の時は一体何をしたらいいんだっけ。冷やして、水分補給をして、薬を飲む。いや、その前に何か食べなきゃいけないのか。おかゆとか俺つくれんのかな。