やわらかな午後に遅い朝食を【短編集】 (ページ14)

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俺と彼女の間に静寂が訪れる。無言でも心地いい関係ではあるけど、今回ばっかりは死ぬほど居心地が悪い。ピンと張った空気。少しでも動けば破裂してしまいそう。それを創り出したのは、紛れもなく俺自身だ。

なんで俺ってこうなんだろう。とことん駄目だ。いい大人なのに、一度の失敗をズルズルと引きずり回して今日1日過ごすのか。彼女もなんでこんな奴と付き合ってるんだろう。こんな素敵な子、もっと他にいい奴がいるだろうに。

グルグルと自己嫌悪に陥っていると、いきなり頬を掴まれて無理やり顔を上げさせられた。

｢見せて。見たい。｣

綺麗な瞳と目が合う。その目には薄く水の膜が張っているけど、目の奥には強い光が見えた。真っ直ぐすぎるその目に見られたくなかったけど、目をそらすこともできなかった。頬にはじんわり熱が伝わってくる。

｢私には弱いとこ見せたくないの？｣

何も発さない俺に彼女は続ける。

｢私は見たいよ。わかってるよ、大ちゃんがいっつも明るいわけじゃないことくらい。人間だもん。私の前ではそのままの大ちゃんでいてよ。楽しい時は一緒に笑いたいし、辛い時は一緒に泣きたいよ。｣

だめだ、泣きそうだ。彼女の左手首をグッと掴んでしまった。彼女の目が少し揺らぐ。

しまった、と思ったときには、俺の頬を包んでいた彼女の柔らかな手はいつの間にか後頭部に移動していて、優しく引き寄せられた。俺の顔は彼女の肩に押し付けられた。青々とした爽やかさとお花が混ざったような香り。彼女の匂いだ。

どれくらい時間が経ったんだろう。彼女はずっと俺の頭をゆっくり撫でたり、髪を軽く握ったり、背中まで手を伸ばしてトントンと優しく叩いたりしていた。俺はただただ抱きしめられていた。

大｢、、Aありがと｣

｢ふふっ、いーえ｣

彼女の肩に顔を埋めたまま呟いた言葉に、彼女は笑った。

あともう少しだけ、このままで