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二月二十三日。
一同は如何にか無事に京に着いた。
洛中に適当な屋敷がないため、取り敢えず洛西壬生郷に屯営し、本部を新徳寺におき、数軒の郷土屋敷に分宿した。
ところが、彼らが京に滞留すること僅か二十日、江戸の幕議が一変した。
江戸へ帰れと云う。
表向きの理由は、生麦事件――前年の八月二十一日、薩摩藩士がイギリス人を殺傷した事件――による不慮の事態に備えるためというのであったが、内実は、清川が無断で公家に近づき、いわば幕府が設立した新徴組を公家方に売ろうと暗躍していることが分かったためだった。
隊士一同は江戸へ下ることになった。
この時、初心を貫くと云った者がある。
近藤以下八人だった。
が、どうした訳か芹沢もこれに応じ、近藤派、芹沢波の両派合わせて十三人が残留することとなった。
いや――正しくは、十四人であろう。
十四人目というのは、芹沢が拾った例の青年である。
彼が気づいたのは、宿舎八木邸源之丞方でのことだった。
「武士なんて、くそくらえだぁー!!」
手当されて布団に横たわり、うわ言のように何かを呟いていた青年が突然怒鳴ったので、看病していた――といっても、ただ様子を見ていただけだが――藤堂平助は相当面食らった。
が、その後青年がぱちりと眼を開き、ほっと安堵の息が漏れる。
「おっ、気が付いたのか。良かった」
自分が布団に横たわっていて、そこに誰かがいると分かった青年は、がばと起き上がろうとしたが。
「うっ、ぐ……」
「まだ起きない方が良いぜ。何があったか知らないけど、身体中あざだらけだったからさ」
藤堂にそう云われて、再び布団へ戻る。
「此処は……」
「え、浪士組の宿舎。……つっても、分かんないよな。都の南にある、壬生村って処だよ」
「都……京なのか?」
驚くのも無理はない。
青年の記憶は、山道での一件から全てないのだから。
「ああ。それよりお前、名前は? 俺、藤堂平助ってんだ」
「え? あ、ああ……井吹、井吹龍之介」
「そうか。よろしくな、龍之介。俺のことは、平助って呼んでくれて良いぜ。たぶん同い年ぐらいだろうし」
「平助……」
「食欲があるかどうか分かんないけど」と、藤堂は立ち上がり、何か食べるものを貰ってくると云い残して、部屋を出て行った。
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Chris(プロフ) - ファーストMeさん» わーいありがとうございます! こっちの作品も神様ネタありますから、待ってて下さい! (。>ω<。)ノ (2017年6月15日 13時) (
レス) id: c0c9efb09c (このIDを非表示/違反報告)
ファーストMe - “刀と共に生きてきました”から来ました！この作品も凄く良かったです！！更新待ってます！！ (2017年6月15日 13時) (レス) id: d48a818a0f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Chris | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/chrisinfo/
作成日時：2017年5月23日 0時
