三章 一風変わった好み ページ20
*
頼が浪士組の一員として正式に加入した、次の日のこと。
芹沢の自室に、近藤、土方、山南は部屋主と向かい合って座っていた。
「警護のため町へ出るだと?」
芹沢が訝し気な声色で繰り返した。
その肩を伊吹が揉んでいるが、どうも手が覚束ない。
「はい。本日は、家茂公が入洛なさる日。呼ばれている訳ではありませんが、我々は元々、上様をお護りするため参った身」
近藤が熱弁する。
「昨今の京の治安を思えば、我らも自主的に警護に――」
「あのような者を警護するに及ばん」
芹沢がばっさりと云い捨てた。
「芹沢殿、戯れでも言葉が過ぎますぞ!」
近藤はその云い方に憤慨した。
彼にとって、将軍は或る意味絶対的存在なのだ。
「無能だから無能だと云っているまでだ。千年も京に閉じこもった公家に、攘夷祈願のために呼びつけられるなど、将軍家の恥晒しだ」
近藤にあのように云われても、芹沢は歯に衣着せぬ云い方で自分の考えを述べる。
そこに、「芹沢先生、新見です」と新見が入室の許可を求めた。
「入れ」
新見は襖を引いて入り、芹沢に「お見えになりました」と囁いた。
芹沢は、肩を揉む井吹の手を大鉄扇でビシリと叩き、「まるで利かんわ。役に立たん犬だ」と云ってから、廊下へと出て行った。
近藤はその後を追い、「芹沢殿!」と呼ぶ。
「行きたければ、お前たちだけで勝手に行けば良い。止めはせん」
そしてそのまま去って行った。
「芹沢殿!」
「良いじゃねえか、近藤さん。俺たちだけで行けば」
土方が止めた。
「止めはしないと、仰っているのですから」と山南も云う。
その言葉で、「……致し方あるまい」と近藤も決めたようだった。
38人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Chris(プロフ) - ファーストMeさん» わーいありがとうございます! こっちの作品も神様ネタありますから、待ってて下さい! (。>ω<。)ノ (2017年6月15日 13時) (レス) id: c0c9efb09c (このIDを非表示/違反報告)
ファーストMe - “刀と共に生きてきました”から来ました!この作品も凄く良かったです!!更新待ってます!! (2017年6月15日 13時) (レス) id: d48a818a0f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Chris | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/chrisinfo/
作成日時:2017年5月23日 0時