第七巻 ページ8
蕎麦屋に入ると浅葱はとっくに席に座り、二人を待っていた。
「二人共遅い」
「お前が早すぎるんだ」
そう文句を垂れる浅葱に薬売りはそう言う。
向かい合って座るようになっている机で、紫月と薬売りは浅葱の目の前の席に座った。
全員席に着いたところで浅葱は店員を呼び、三人は昼食の注文した。
今は昼時だ。
蕎麦屋も混んでるし、料理が来るのが遅くなると店員は親切に告げてくれた。
店員が厨に戻った後、しばらくの間、皆無言でいたが、その気まずさに耐えかねた浅葱が紫月に話しかけた。
「紫月さんは占いに興味はありませんか?」
「占い...ですか?」
「浅葱...」
浅葱は薬売りの言葉を無視し、また淡々と話を続けた。
「知っての通り、俺は占い師。
ですが、兄者や紫月さんを占った事がないもので、少し興味があるんです」
「興味?」
__この先に何があるか、私には分からない。
「構いません」
__知っておいた方が得だろう。
「いいんですよ。此奴の言うことなんて聞かなくても」
「いえ、私も未来に何があるか、少し気になりまして」
薬売りは「そうですか」と一言告げると、紫月から目を落とした。
「ほら、紫月さんもそう言ってる事だし、ついでに兄者もやりません?」
浅葱はそう誘うが、薬売りはそれを拒んだ。
「生憎、俺は占いなんて興味が無い...そもそも、浅葱の占いで当たったところを見た事がないからな」
「指定した未来を見れる訳じゃ無いからな。
仕方ないだろう?」
浅葱はそう小さく言葉をこぼしたが、「気を取り直して」と懐から鎖に繋がれた拡大鏡を取り出した。
「お手をお見せ下さい。」
紫月は不思議そうな表情で浅葱が差し伸べた手の平に手を乗せた。
すると浅葱はその紫月の手に拡大鏡を翳し、その中心を見つめた。
なんとも不思議な感覚であった。
今までモノノ怪やら妖やら、通常では考えられない者に出くわしてきたが、そんな摩訶不思議な力と今触れ合っていると思うと、いつもとは違う感覚になった。
「...」
暫くすると、浅葱は静かに手を離した。
占いはどうだったのかと胸を膨らませながら浅葱を見るが、浅葱は気まずそうな表情で小さく告げる。
「...見えなかった。」
「え?」
その答えに、先程の気持ちが拍子抜けした。
「縁起が悪いが、貴方の未来が全く見えない。
俺もまだまだ未熟者の用だ」
浅葱のその発言に薬売りはそれ見た事かと言った表情を見せた。
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作者名:赤青ほととぎす/瑪瑙 x他1人 | 作者ホームページ:http
作成日時:2018年11月27日 22時