検索窓
今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:6,747 hit

四日目 浜梨 ページ6

朝、今日は雨がシトシト降っていた。

私は寝転がったまま、昨日持って帰ってきた絵馬を眺めていた。

窓際には花瓶と風車。いつもと変わらない朝。

そして、いつもと変わらないならそろそろ兄様が来る。

「白(きよ)〜朝だよ、起きな〜」

「当たり」

「何?何があたったの?」

「何でもない」

少し可笑しくて、頬が上がったような気がした。

これは笑うってことなんでしょう?


大分ここでの生活にも慣れてきた。快適に過ごせるようになり、実験も怖くなくなった。

今日は何をしようかな。

兄様の昔話を聞かせてもらうことにした。

「兄様、兄様の昔の話を聞かせて?」

「えぇ〜昔話は苦手だな」

そう言い兄様は頭をかく。これは悩んだ時の兄様の癖。

兄様の癖も大分わかってきた。

でも、まだまだ知らないことが多すぎる。

だから昔話なんて聞きたくなるんだろうな。

「僕の話はいいよ。僕は白の話が聞きたい」

そういい椅子に腰掛ける。

これまでにも兄様のことを聞こうとしたけど、いつもこんな風に流される。

だから、今日は少しわがまま言ってやる。

「じゃあ、私の話でもいいよ。何故私に白って名前をつけたの?」

「何故だと思う?」

しばらく考え、私は素直な気持ちを言葉にした。

「分からないけど、私はこの名前が好き」

「僕もだよ」

そんな兄様を見ていると、この名前にもっと深い意味がある気がした。

「教えてくれないの?」

「いつか必ず分かることだよ」

兄様は優しく言うけれど、関わるなと言われている気がして悲しくなった。

だから余計に兄様のことを知っていたくて、触れていたくて。

一つだけ聞いてみたんだ。

「じゃあ、せめて兄様の名前を教えて?」

「仕方ないなぁ、僕は清玄(きよはる)だよ。清い黒」

「清玄・・・」

私は初めて聞くその単語を呟いた。兄様の名前っていうだけでこんなにも言葉は輝くことを知った。

なんて美しい名前だろうか、名付け親もきっと美しい人だったんだろう

「清玄、とてもいい名前」

「いい名前か・・・本当にそうならいいけど・・・」

悲しみと苦しみを混ぜたような表情をする兄様は小さく呟いた。

でも私が新たに言葉を吐こうとしたら、制止して立ち上がる。

「さてとっ、お話はこれでおしまい!さぁ、今日の実験に行こうか」

そうして、兄様に手を引かれ実験室へと向かった。



【浜梨】

花言葉「悲しくそして美しい」

五日目 山桜→←三日目 千振



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (28 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
11人がお気に入り
設定タグ:オリジナル , 水葬 ,   
作品ジャンル:その他, オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

リン(プロフ) - ねんねこさん» 返信遅くなり、申し訳ございません!!綺麗で儚く美しい文章を綴りたいと思い作った小説であったので伝わってとても嬉しいですヾ(*´∀`*)ノ更新ももっと早くできるよう努力しますね!良ければこれからもよろしくお願いします!! (2018年11月23日 17時) (レス) id: 36ae7035f1 (このIDを非表示/違反報告)
ねんねこ(プロフ) - えっすごい面白いというか文が素敵…!花言葉等も凝っていて素晴らしいです!お気に入り追加しちゃいました…続き見たいです! (2018年11月6日 3時) (レス) id: b2f2509cb0 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:リン | 作者ホームページ:(´▽`*)ノシ  
作成日時:2016年12月27日 12時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。