【ツイステ】殴れ、リドル。2 《完結済み》

82話 ページ35

随分安らかな顔で眠っている母親に自らの涙がぽたりと垂れるのを、袖で拭った。

殴り蹴り棒で叩き、機嫌が良い時に窒息死するかと思うくらい抱き締めてキスをしてきた、愛していると、好きだと、A、あなたがお母様をお母様にしてくれたのよ、生まれてきてくれてありがとうと、食事中にテストの結果を聞かれたので正直にケアレスミスをしたことを答えると髪の毛を掴んで引き摺られ自室に叩き込まれて、課題が終わるまで出てはいけませんと、リドルが生まれてすぐの頃、一人部屋になって三日目のこと、夜、寂しくて寂しくて、でももう下が居るのだから我慢をしなくてはいけないとただ泣き疲れるのを待っていた時、ノックの音とともに扉が開いて、「寝れているかと、Aの様子が気になって」と「こんな時間まで起きてちゃダメよ」と、抱き締められた胸からはあまいミルクの香りがして、あたたかくて、柔らかくて、そのうち母は先ほどまでリドルに歌っていたのであろう子守唄を鼻唄で歌って、これ以上の愛は一生受けられないだろうと思って、母を抱き締めて、声を出さないように泣いたこと、まだ泣いているのに、リドルの方へ行かないとと行ってしまって、結局ひとりで泣きながら寝たこと。


「……こう見ると、よく似てるよ」


自らの母は、自分と、自分の弟と、明らかに血縁関係があるとわかる容姿をしていた。

ごめんねお母さん、大好きだよ、と。思う。殴ってごめんなさい、なんて。そんなじゃない。全部、全部に謝罪したい。酷いことを言ってごめんなさい。陰口を言ってごめんなさい。大好きなのに。あなたの思った通りの子どもに生まれてあげたかったと、もっとあなたを喜ばせてあげたかったと、あなたの自慢の子どもになりたかったと、あなたを自慢の母親にしたかったと、そう心から思う。

だから、ごめんなさいと、心から。

そっと優しく持ち上げて、ベッドへ母親を寝かせてやった。

ベッドサイドの花瓶へ1本薔薇をいけて、キスをしようかどうか迷って、しなかった。リドルが見ていたから。


「……まだ行くとこあるんだろ」

「うん」

「……行こうぜ。オレは母さんとは全部終わった」

「ふふふ、うん。ボクも」


何故か上機嫌なリドルが手を伸ばしてくるので、その手を掴んだ。

母親の手とは形や大きさが若干違うと、そう思って。いつの母親と手を繋いだ記憶が手に残っているのか考えようとしたが、面倒だったのでやめた。

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