【ツイステ】殴れ、リドル。2 《完結済み》

75話 ページ28

「大丈夫、A」


リドルのAへ掛けるその言葉の言い方が、明確に疑問系ではなかったから。


「大丈夫」



「……」


息を吸って。

震える声で、それでも。


「ゆ……っるす訳ねぇだろクソ野郎！今更謝んじゃねえよ！謝って許されてえだけだろ！せめて一生悪者でいるくらいの胆力見せろよ……！自己保身しかっ……自己保身しかできねぇクズが……！」

「……ごめんね」


リドルと繋いでいるAの手はぶるぶると震えていて、それでもAは前を、父親を見据えていて。


「あなたしか、あなたしか頼れなかったのに、あなたは母親の味方をした」

「……ごめん」

「何回も言ったのに、暴力を振るわれるって、何回も何回も何回も言ったのに、何をされるかもちゃんと言ったのに、リドルが死ぬかもしれないって」

「……」

「……は」


突然Aはぼたぼたと涙を流しながらそれでも鼻で笑い、ふうと息を吐き肩を落とす。震えながら深呼吸を数回して、呼吸を整えて。

微笑みをたたえて。


「……いいですよ、もう。許さないのも疲れるので」

「……」

「大丈夫です。もう、いいです」

「……」

「あなたにもあなたなりの事情があったんでしょう。自らの子どもがお父さん殺される助けてくださいと助けを求めていても、それに応えられないほどの大きな事情が」

「……」


それを言ってから、Aはまた笑って、眉を下げて。


「……すみません、あなたの事情も考えず。しんどかったんですよね、仕事も忙しくて、配偶者とこれ以上波風を立てたくなくて」

「……」

「わかります、わかります。……だからもういいです」


はあ、とAは大きく溜め息を吐き、部屋の隅へ歩いていきそこで膝を抱える。

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