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「おつかれさまー…、え、あれ?…翔ちゃん何してんの」



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疲れたようすで休憩室に入って来た相葉は、難しい顔をして机に向かっている櫻井に気付いて、その机をとんとんと叩く。


ぱっと顔を上げた櫻井に、歯を見せて笑った。「何してるの」と言うと、櫻井は恥ずかしそうに笑って


"考えごと"と言った。



「考えごと?」



机の上には、分厚い和紙でできた短冊が何枚かと、ボールペン、それから筆が置いてあって

いくつかの短冊は言葉で埋まっていた。


何か、書き物をしていたような散らかり方で

相葉の視線が、机の上に落ちたのに気付いた櫻井は、机に覆いかぶさってそれを隠した。



「歌をよんでたの」



腕と机の隙間から、するりと短冊を持ち上げて読もうとすると、嫌だ、というふうに引っ張り返される。



「なんで。いいじゃん、見せてよ」


少し赤らんだ耳の先が可愛らしくて、相葉はそのまま、短冊に目を落とす。



【秋まひる 柳の散るを……】



そこまで読んで、富田砕花の歌を思い出した。

【城崎の いでゆのまちの秋まひる 青くして 散る柳はらはら】という句があるのは知っている。何年も城崎で、櫻井の傍で働いていたら、ゆかりのある歌のいくつかは、覚えてしまうのだ。



(…珍しい…、オマージュかな…)



ダンダン、と音がして、ふと顔を上げたら、櫻井が机を叩いていた。

驚いた相葉が顔を上げて、目が合うと、右手の小指側面を左手のひらに叩きつけ、そのあとで、両手の指を折り曲げてグンと顔の横まで上げた。



やめろ


怒るぞ



長い間見ていなかったので、その手話の意味を理解するのに時間がかかって、慌てて相葉は短冊を返した。


「ごめんごめん……そんなに嫌なの」


文字を書くのが好きだから、そちらのほうが色んな人に伝わるからと、筆談のほうを好んでいたのに、咄嗟に手話だなんて、よほど見られたくなかったのだろうと、相葉は反省した。


むっと頬を膨らまして、櫻井はてきぱきと机を片付け始める。


相葉がゆっくりと時間をかけて着替えをすまし、スマホで届いたメッセージを確認し、いくつか返し、それを閉じたあと、トイレに行って用を足して休憩室に帰って来ても、


未だに櫻井は、むすっと机を睨んでいた。




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きんにく(プロフ) - イチさん» なんとー!そんなに大切に読んで頂けるなんて幸せすぎます。本当にありがとうございました。これからも頑張ります♪ (2021年1月18日 23時) (レス) id: 527827598f (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - もふもさん» こんな未熟な作品に涙などとてももったいないですが、嬉しいです^^そう言っていただけると頑張れます!ありがとうございました。 (2021年1月18日 23時) (レス) id: 527827598f (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - 律さん» 律さん、最後まで読んで頂いて本当にありがとうございます!心温まる最後にできていたのであればとてもとても嬉しいです♪ (2021年1月18日 23時) (レス) id: 527827598f (このIDを非表示/違反報告)
イチ(プロフ) - きんにくさん、こんばんは。最終回を読みたいのに、終わってしまうのがもったいなくて、ちょっと読んではやめを繰り返していました。毎回思いますが、きんにくさんの描く世界が美しすぎて、読んでいて幸せな気持ちになりました。ありがとうございました。 (2021年1月17日 21時) (レス) id: 9e72143338 (このIDを非表示/違反報告)
もふも - きんにくさん、完結ありがとうございます! きんにくさんのお話には毎回泣かされます(/ _ ; ) 心温まる場面が多くて、つい何度も読んでしまいます。素敵な作品ありがとうございました!これからも応援してます!!! (2021年1月17日 1時) (レス) id: f5de961c82 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きんにく | 作成日時:2021年1月2日 0時

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