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「…よく喋るね?」



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パチ……と、連続的に続いていた音が止んで、大野が、はた、と顔を上げた。

きょとんとした顔をして、「そうかな」と言う。


なんとなくそこで、会話が終わって


大野は携帯灰皿をドアポケットに戻し、二宮は視線をフロントガラスのずっと向こうに戻した。



ブゥゥゥゥン……と、車は、車らしからぬ静けさで進んでいく。



大野は流れていく景色を、とくに記憶に留めようともせずに見ていた。


城崎のことを思うのは、寂しすぎる気がしたのでやめておいた。二宮も、それを知ってか知らずか、この2週間のことについては何も聞いてはこなかった。



音の有る沈黙が、長く続いた。



なにか喋ってもいいけれど、「よく喋るね」と言われた手前、大野は自分から話し出すのは止めておいたほうがいいような気がして、黙っていた。






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「辞めたい?…歌」





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少し眠ろうかと、大野が目を閉じかけたときだった。

ふっと瞼を上げてバックミラーを見たら、二宮は、まっすぐに前を見つめたままだった。


「う…、…え?」


あまりに唐突だった。

二宮は、不自然なほど自然な格好でハンドルを握っていた。




辞めたい?


歌。



二宮はそれきり黙ってしまった。


あまりに普通にしているので、大野は聞き間違いか、空耳でも起こしたのだろうかと思うほどだった。

でも確かに、彼は言った。



辞めたいか、と。歌を。



大野はそれに対して、なにも答えられなかった。


下唇をそっと噛む。

大事な話はしたくない。言葉を、見つけられなくなる。



だから、聞かなかったふりをして。



上着のポケットに手を突っ込んだら、そこにあった、小さな紙の感触。



(…、何か入ってる)



上着のポケットに何か入っていた。紙のようなものだ。


城崎ではいつも浴衣を着ていたから、一度も袖を通さなかった上着だ。

行く道でガムを噛んでいた、そのときの包み紙が、そのまま入っていたのかもしれない。



そう思いながら、何気なく取り出してみたそれは、ガムの包み紙では無かった。

きれいに4つ折りにされていたのを、開いたら



もう頭に染み付いてしまった、優しく強い、あの文字で





【あなたの 言葉で】





そう書いてあった。





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ふ、と、湯屋の香りが掠めたような気がして


大野は何かを手繰り寄せるように、その紙を鼻先に持っていく。



置いて来た秋の、匂いがした。





「…カメラ…は、嫌い……」





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情→←陽



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きんにく(プロフ) - イチさん» なんとー!そんなに大切に読んで頂けるなんて幸せすぎます。本当にありがとうございました。これからも頑張ります♪ (2021年1月18日 23時) (レス) id: 527827598f (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - もふもさん» こんな未熟な作品に涙などとてももったいないですが、嬉しいです^^そう言っていただけると頑張れます!ありがとうございました。 (2021年1月18日 23時) (レス) id: 527827598f (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - 律さん» 律さん、最後まで読んで頂いて本当にありがとうございます!心温まる最後にできていたのであればとてもとても嬉しいです♪ (2021年1月18日 23時) (レス) id: 527827598f (このIDを非表示/違反報告)
イチ(プロフ) - きんにくさん、こんばんは。最終回を読みたいのに、終わってしまうのがもったいなくて、ちょっと読んではやめを繰り返していました。毎回思いますが、きんにくさんの描く世界が美しすぎて、読んでいて幸せな気持ちになりました。ありがとうございました。 (2021年1月17日 21時) (レス) id: 9e72143338 (このIDを非表示/違反報告)
もふも - きんにくさん、完結ありがとうございます! きんにくさんのお話には毎回泣かされます(/ _ ; ) 心温まる場面が多くて、つい何度も読んでしまいます。素敵な作品ありがとうございました!これからも応援してます!!! (2021年1月17日 1時) (レス) id: f5de961c82 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きんにく | 作成日時:2021年1月2日 0時

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