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同情とか憐憫とか、そのようなありきたりな言葉で済むなら、こんなに息を苦しくすることもないはずだ。


大野はそれからきっかり3日、乾いた日のカタツムリのように寝込んでしまった。



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「大野さん…、大野さん」


とんとんと、相葉が掛け布団を叩く。

和室のテーブルの上には、運んできた朝食が、かろうじて湯気を立てていた。みそ汁の味噌はもう、二度と上がって来ない予感をさせながら固く沈んでいる。



「…今日はご飯が柔らかく炊けたみたいで…、いい匂いがしません?」



相葉がそうやって声を掛けても、掛け布団の端を掴む手に、ぎゅっと力が入っただけだった。

ちゅん、と外でスズメが鳴いたら、カタツムリの殻は申し訳なさそうに、もっともっと小さくなった。


「冷たいぶどうもあります。あんまり知られてないんだけど、大阪と奈良のさかいめのとこで採れるぶどうが、けっこう美味しいんです。この宿のオーナーがそのあたり出身なんです、実は。……食べます?甘いですよ」


大野は、昨日も丸一日、何も口にしなかった。

悪い夢に起こされて、汗を流しにシャワーに立つ以外では、ベッドから起き上がることもしなかった。


「なにか…お口に入れて……ね、じゃないと…」


相葉の言葉に、何度も首を横に振った。彼は昨日も、多少動揺しながら、ベッドの横に膝をついて、長いこと声を掛け続けてくれていた。

相葉の言葉には、たいがい頷いて応えたものであるが、ここ2日で、それを凌駕するほど首を横に振った。

迷惑であることは分かっていた。分かってはいたけれど、どうしても顔を出せなかった。



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同情とか憐憫とか、そのようなありきたりな言葉で済むなら、こんなに息を苦しくすることもないはずだ。


----『文学オタクなんです、あの人(笑)ときどきこういうことするんです。ごめんなさいね、めんどくさいかもだけど付き合ってやってください』


【城崎の いでゆのまちの秋まひる 青くして 散る柳はらはら】


たくさんの言葉を持つ彼は、それを幾度となく、口に出したいと思ったに違いなかった。

自分の声で、人の声で、それがどんなリズムで鳴るのか、知りたいと思ったに違いなかった。



しかしそれは叶わないのだ。あんなにも、綺麗な形の耳を持っていたとしても。



大野は、そのことが櫻井にどれほどの苦しみをもたらしたか、想像しないわけにはいかず

そのたびに、破れそうなほどに胸を詰まらせた。




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きんにく(プロフ) - イチさん» なんとー!そんなに大切に読んで頂けるなんて幸せすぎます。本当にありがとうございました。これからも頑張ります♪ (2021年1月18日 23時) (レス) id: 527827598f (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - もふもさん» こんな未熟な作品に涙などとてももったいないですが、嬉しいです^^そう言っていただけると頑張れます!ありがとうございました。 (2021年1月18日 23時) (レス) id: 527827598f (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - 律さん» 律さん、最後まで読んで頂いて本当にありがとうございます!心温まる最後にできていたのであればとてもとても嬉しいです♪ (2021年1月18日 23時) (レス) id: 527827598f (このIDを非表示/違反報告)
イチ(プロフ) - きんにくさん、こんばんは。最終回を読みたいのに、終わってしまうのがもったいなくて、ちょっと読んではやめを繰り返していました。毎回思いますが、きんにくさんの描く世界が美しすぎて、読んでいて幸せな気持ちになりました。ありがとうございました。 (2021年1月17日 21時) (レス) id: 9e72143338 (このIDを非表示/違反報告)
もふも - きんにくさん、完結ありがとうございます! きんにくさんのお話には毎回泣かされます(/ _ ; ) 心温まる場面が多くて、つい何度も読んでしまいます。素敵な作品ありがとうございました!これからも応援してます!!! (2021年1月17日 1時) (レス) id: f5de961c82 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きんにく | 作成日時:2021年1月2日 0時

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