打 ページ11
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【人が嫌いですか】
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櫻井は、唐突に大野が飛び込んできたことには、さほど驚かずに
そのまま ずるずると崩れ落ちそうになる身体を、よいしょと支えて起こしたのだが
2枚目を辛うじて読むと、意表をつかれたように、少しだけ口を開けた。
【人が嫌いですか】
(これ……ずっと前に渡した… …、…そうだ、雨の日に)
ぎゅう、と胸に再び圧迫を感じて、見ると3枚目が押し付けられていた。
間を開けずに、4枚目、5枚目と、次々に紙はやって来る。
【お出掛けなさるなら、お湯籠をお持ちください
あと今日は、傘も】
【くだらない言葉遊びが
誰かの記憶に永遠に残ることがあります
いい意味でも、悪い意味でも】
【お疲れのようですので ごゆっくりお休みください】
少々右上がりの、止めと はらいに厳しい文字。
それは日常的な会話から、心を込めた言葉まで、乱雑に入り混じっていた。
順番も、古いものと新しいものと、ぐちゃぐちゃになっていた。
(取ってたのか……、…こんな紙きれ…大事に……)
細い肩が、大きく上下に動いていた。
走って来たのだろうか、と櫻井は思った。
さして大事ではないメモの束を、大事そうに抱えて。
宿からここまで、止まらずに走ったならさぞ疲れるだろう。この場所で、そんなに急いて移動する人は居ないから、目立ったかもしれない。人に、見られてないといいのだが…
そう考えている間も、ずっと、小さな紙切れは途絶えなかった。
なにかを伝えるように、ひとつずつ、ぎゅっと押し当てられる言葉。
意味がありそうで、意図がありそうで、いまいち汲み取れないのは
彼自身が、心の乱れそのままに、分からないままに、こうしているからか。
どうだろう。顔が見えない。
ふわりと下りた前髪に、大野の表情は隠される。
それでも、一生懸命に紙を押し付ける、不健康な脈の拍動のようなリズムが
震える指を隠すために、ぎゅっとメモを握りしめるのが
ただ
伝えたいと
歯がゆいのだと
そう言っているように、見えたから。
(この人…別に 下手な訳じゃ… …、…何かに……口をふさがれてるみたい)
自分の胸に、押し付けられては、ひらりと花びらのように落ちてゆく
小さくて平凡な、白い紙の数々を
櫻井は、静かに見つめていた。
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白い紙が、さらさらと宙を降りて
しんと音もなく、冷たい石橋の上に滑り落ちていった。
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きんにく(プロフ) - イチさん» なんとー！そんなに大切に読んで頂けるなんて幸せすぎます。本当にありがとうございました。これからも頑張ります♪ (2021年1月18日 23時) (
レス) id: 527827598f (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - もふもさん» こんな未熟な作品に涙などとてももったいないですが、嬉しいです^^そう言っていただけると頑張れます！ありがとうございました。 (2021年1月18日 23時) (レス) id: 527827598f (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - 律さん» 律さん、最後まで読んで頂いて本当にありがとうございます！心温まる最後にできていたのであればとてもとても嬉しいです♪ (2021年1月18日 23時) (レス) id: 527827598f (このIDを非表示/違反報告)
イチ(プロフ) - きんにくさん、こんばんは。最終回を読みたいのに、終わってしまうのがもったいなくて、ちょっと読んではやめを繰り返していました。毎回思いますが、きんにくさんの描く世界が美しすぎて、読んでいて幸せな気持ちになりました。ありがとうございました。 (2021年1月17日 21時) (レス) id: 9e72143338 (このIDを非表示/違反報告)
もふも - きんにくさん、完結ありがとうございます！ きんにくさんのお話には毎回泣かされます(/ _ ; ) 心温まる場面が多くて、つい何度も読んでしまいます。素敵な作品ありがとうございました！これからも応援してます！！！ (2021年1月17日 1時) (レス) id: f5de961c82 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きんにく
| 作成日時：2021年1月2日 0時
