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イルミに腕絡めて、屋敷に入るように促す。
「ねぇ、イルミ… ちょっとは笑ったほうがいいんじゃない？」
「なんで？」
私のその問いに足を止めてこちらに視線を向ける。
「そりゃ、カップルを装って入るのに2人して無表情は怪しいでしょ」
周りを見渡すと表情豊かな人ばかり、そんな中、こんな二人組は怪しすぎる、そう判断した。
「なら、Aが笑えばいいよ」
その返答はごもっともである…
そう思い、一つため息をついてから、頑張って笑顔を作る。
「これでどう？」
「… 下手くそだね。目が笑ってない、口角は引きつってる、本当にあのAなのかと疑うよ」
次から次へとダメ出しを食らったので、表情を何時ものに戻す。
「…諦めよう。このまま行こう」
私がそう言うと、イルミは歩を進めたので、私もそれに合わせて行く。
中に入ると、綺麗な内装に、色豊かなドレスを纏った女性、スーツを着た男性、テーブルに並ぶ数々の豪華な料理に懐かしさを感じた。
家を出る前にも何度かこういう場に連れてこられた事はあったが、当時はじっくり楽しみ機会がなかった。
「Aは自由にしてていいよ」
「イルミは？」
そう聞くも、彼は既に奥の方に進んでいた。
仕事出来たが少しばかり期待はしていたためか、残念だと思いながら、私も人の間を抜けて自然と参加者に紛れ込む様に振舞った。
その屋敷に入って1時間たった頃に、窓際でグラスに入ったワインを嗜んでいると、急に何者かに手首を掴まれ咄嗟にその人物に振り返る。
「終わったから帰るよ、騒ぎになる前に」
そこにはイルミが居たが、来た時と恰好が違う。
スーツのジャケットが無く、白いワイシャツにネクタイだった。
「上どうしたの？」
「ああ、ちょっと返り血をね、取り敢えず出るよ」
そう言うと、イルミは私の腕を引っ張ってズカズカと入り口の方へ向かい、外へ出ると、酒で少し熱くなっていた頬を冷たい夜風が撫でる。
「私いらなかったんじゃない？」
私がしたことと言えば、立食パーティーに参加し、ワインを飲むこと。この仕事に私が必要だったとは到底思えない。
「誰も仕事を手伝って欲しいって言ってないけど」
シャツに慣れていないのか、外に出るや否や、イルミはネクタイを緩め、袖のボタンを開ける。
「で、楽しかった？」
そう一言聞いてきた。
「…一人じゃ楽しいものもそうじゃなくなるわよ、じゃ帰るね」
私はそう言ってイルミに背を向けて、帰路についた。
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吉田 夕陽(プロフ) - 初めてのコメント失礼します。今までのイルミの作品の中でこの作品が一番しっくり来ました！とても良い物語でした！！ (2022年2月28日 12時) (
レス) @page13 id: ab26c36e5b (このIDを非表示/違反報告)
tk - 投票1回では足りないくらい、大好きな作品です！ (2021年5月5日 0時) (レス) id: 1337dc1b37 (このIDを非表示/違反報告)
tk - うおおおおおおおおおおおおおお！！！ 更新ありがとうございますうううううう！！！嬉しいです！！ (2021年3月22日 21時) (レス) id: 311d9fd560 (このIDを非表示/違反報告)
はざくら(プロフ) - 素敵な作品です！最更新楽しみにしてます！ (2021年2月27日 0時) (レス) id: 86be810755 (このIDを非表示/違反報告)
きき - 今まで読んだイルミ夢小説の中で一番良かったです。理想のイルミでした。キャラ崩壊ほど甘くなくてとても理想的でした。続き楽しみに待ってます。 (2021年2月24日 3時) (レス) id: 9b6d1d410f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：花ノ絵 | 作成日時：2020年4月2日 17時
