閑話：side安室―2 ページ45
コ「……安室さん」
安「なんだい？」
努めて、安室透で対応する。
コ「……Aさんを、守ってね、安室の兄ちゃん」
安「……！ああ、わかった」
そう言って、僕は今度こそ、ポアロを出た。
幸い、蘭さんにしてもらう治療はすでに終わっているし、そのまま自宅に帰っても何の問題もない。結論づけて、僕は愛車にAさんを乗せてから、シートベルトをしっかりと締め、運転席に座る。
そのまま自宅に向かって車を発進させた。
**
自宅に着き、ベッドの上にAさんを寝かせる。苦しそうな寝顔は変わらない。その表情を、ベッドに腰掛けてしばらく見つめる。
しかし、唐突に大きなため息が出た。
安「……何をやっているんだ、僕は……」
たかが一人の女の子に。本当に、自分らしくない。
けれど、放っておくことがどうしてもできなかったのだ。
安「…………はぁ……」
己の行動の理解不能さに、思わずため息が出てくる。
思わずため息が出てきてしまったのは仕方がないだろう。
今のうちに、蘭さんたちへの言い訳も考えておかなければならない。あんなところでまさか自身が冷静さを失うとは思いもしなかった。
おそらく、コナンくんが多少フォローしてくれているだろうけど、それでも自分でも言い訳を考えておかなければならない。
安「……もう少し、穏やかに眠ってくれないかな……」
ベッドに寝かせた彼女を見れば、未だに難しい表情をして目を瞑っている。苦しそうなその表情を見ると、こちらの胸も締め付けられるような感覚になる。
ふわりと、眠っている彼女の髪をすくように撫でる。
今にも泣きそうな、苦しそうな表情が、気のせいかもしれないけれど和らいだ気がした。
少しでも、穏やかな眠りを与えたくて、気づけば僕は、彼女の髪を、頭を、ずっと撫で続ける。
その表情から、苦しみや悲しみをなくすように。なくなるように願いながら。
どのくらいその行動をしていたのか、もうわからなくなる。けれど、ようやく彼女の表情から苦しみや悲しみが和らいできたような気がする。
撫でる手を止めて、その表情を見つめる。あどけない、本当に普通の女の子。
そういえば、と思い出す。
安「……あの男、この子のことを“A様”っていってたな……」
冷静になって思い返してみれば、明らかに不自然だ。しかし、調べさせるにしても情報が少なすぎてこれでは無理だろう。
とりあえず、もう少し様子を見ることにしようか……。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 281人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
妃沙(プロフ) - 明里香さん» 誤字のご指摘ありがとうございます！修正しました！ (2018年6月2日 20時) (
レス) id: 8817d67e5d (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 安室sideに誤字がありました。「毒の車」ではなく、「僕の車」です。 (2018年6月2日 19時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
妃沙(プロフ) - コメントありがとうございます！面白いと言っていただけてとても嬉しいです！更新頑張ります！！ (2018年5月27日 8時) (レス) id: 35e497a401 (このIDを非表示/違反報告)
奈楠(プロフ) - 凄く面白いです！！、更新頑張ってください！応援しています！！！ (2018年5月26日 23時) (レス) id: f44adf4250 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：妃沙 | 作成日時：2018年5月18日 8時
