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こんな苦しさ、 ページ32

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「_____き、……ざき、」


ーーー島崎!


『ッ、!』


びくり、と身体を跳ねさせて起き上がる。耳元で鼓膜が破れるんじゃないかというくらい大音量で呼ばれた名前に反射的に。

頭がぼうっとする。あれ、私、なにを、

少しずつ覚醒していく頭に、漸くこの状況を理解することが出来た。嗚呼、頭が重い。何だか嫌な夢を見ていた気がする。


____確か、中原と一緒に拠点に帰った後、疲労から眠ってしまったのだ。それはもう中原の部屋のソファで堂々と。


だったら今私の名前を呼んだのは、中原さんだろうか。

そう思い、Aは上を見上げると其処に居たのは見知らぬ痩躯の少年。鋭い目付きでAを見下ろしながら、Aが起きたことを確認すると氷のように冷たい声色で吐き捨てた。


「_____太宰さんが、お呼びだ。」

『……どーも。』


「地下牢にて待つ、とのお達しだ」とも付け加え、まるでAを塵虫でも見るような眼差しで一瞥すると、くるりと踵を返す。
彼からは、憎悪に似た何かを感じた。


『……気分わるい、』


胸に燻るやけに重い何かと相まって、彼の態度に苛々を募らせていく。そういえば、彼は一体誰なのだろうか。「太宰さん、」と云っていたのだから、あの糞男の部下か何かか。

____まぁ、どっちでも良いけど。

心の中でそう一蹴して、軽やかにソファから降りて扉の前まで移動する。
地下牢、と云っていたが一体何の用なのだろう。


『ーーーなんか、嫌な予感がする、』


何が、と訊かれれば答えようがないのだが、地下牢には行くな、と本能が警告を出している。
行ったら後悔する、とも。

しかしそんな事も云ってはいられず、扉を開いて部屋から出る。出るついでにポケットの中を漁ると手に当たるかさり、とした感触。
たまたま入っていて蜂蜜色のそれの包装紙を剥がし、口の中に入れると甘い味が舌に転がり、段々と意識を覚醒してくれた。


『地下牢へ、れっつごー』


そう呟いて、扉は無機質な音を立てて閉じられた。





ーーーどう足掻いても、この運命は変えられなかったのだろう。






.

想像していなかった 。→←息をするのもままならない



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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 太宰治 , 中原中也   
作品ジャンル:アニメ
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y(プロフ) - まだ、見てます。こんなに端麗な日本語で綴られた物語を書ける方、中々いないです。最高の作品です。どうか、いつか続きが読めることを願っています (2月26日 19時) (レス) @page38 id: 02477a501f (このIDを非表示/違反報告)
RENKA - 何周も見てるけどやっぱ飽きないし面白いです!!更新待ってます!!!!!() (2022年11月15日 14時) (レス) id: 345a1df315 (このIDを非表示/違反報告)
おみず - お、おわり……??続きがまた見たいです……この先でも活躍するんだろう夢主ちゃん見たいです……!!! (2022年11月10日 23時) (レス) @page38 id: 0c3a3b3097 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫ニサナ - 更新待ってます!! (2022年3月14日 22時) (レス) @page38 id: 1c42f0d3fc (このIDを非表示/違反報告)
RENKA - え、待ってめっちゃ好き。続き気になる…!更新待ってます、頑張ってください!! (2022年2月1日 17時) (レス) @page38 id: b5b9f86a00 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雪原 ゆずき | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php  
作成日時:2016年8月4日 13時

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