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そのに ページ2

「ん……」

見たことない天井が見えた。…体はじわじわ痛いし、酸素マスクが付けられてる。規則正しい電子音が聞こえた。もしかして手術?

ドアが開いて看護師さんが入ってきて、急いで先生を呼びに行った。こういう時ドラマでは親が横にいて涙を流し、よかった…って言って貰えるのに。私の親はどこにもいなくて。まぁ、今更気にすることでもないよね。


「…うん、問題なさそうだね。なにか質問はある?」

術後経過もいいし、退院も早そうだね。幼い頃からの主治医が当事者である私を置いて、とても嬉しそうに話している。というか、

「私、手術の予定なんてありましたっけ。ドナーはどこの人ですか?」

まるで動いてないみたいに痛みを感じない私の、いや、誰かの心臓。これがふつうなの、そんな言葉で私にとっての普通はいとも簡単に崩れた。私が普通じゃないみたいな言い方はどうかと思う。

あれ、そういえば。いつも私が目覚める前から起きていてうるさい彼がやけに静かだ。寝てる私を無理やり起こして見た夢の話とか、どの看護師さんの脚が綺麗だとかどうでもいいことばっかりの彼が。私が元気の無い時は必ず気づいて笑わせてくれる優しい彼が。

先生達があからさまに彼の使ってるベットの方に立ってるのも、いつも役割なんてないほど開けっ放しの私と彼のベットの間のカーテンが今日仕事をしているのも。ああ、なるほど。この心臓の持ち主が。

「志麻くん」

貴方の心臓、か。

私が発した言葉で固まる病室。言葉に詰まる看護師さん、どう説明しようか考えている先生。それで全てとは言わないけど、理解出来ないほど馬鹿じゃない。

「お互い危ない状況だったんだ」

「彼が貴女に移植する事を望んでいたんです」

「二人とも死んでいたかもしれないの」

二日前まではお互い元気だったんだけどな。突然のことに頭がパンクして着いてこない。感情の起伏が少なくなって、怖いほど冷静というか淡々としてる。

そのさん→←そのいち



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設定タグ:歌い手 , 志麻
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すめらぎ しき(プロフ) - ぺるはむさん» えっそんなこと言っていただけて嬉しいですありがとうございます.......!! (2019年6月19日 14時) (レス) id: e8e9029435 (このIDを非表示/違反報告)
ぺるはむ - 志麻くんの感動系めっちゃよかったです!ところどころ志麻くんの面白いところも入ってて読んでてすごい楽しかったです! (2019年6月19日 8時) (レス) id: 134342f6dc (このIDを非表示/違反報告)
すめらぎ しき(プロフ) - かなとさん» 至らぬ点ご指摘頂きありがとうございました。二度と、このようなことがないように努めます。 (2019年6月13日 21時) (レス) id: 34d01c0035 (このIDを非表示/違反報告)
すめらぎ しき(プロフ) - かなとさん» すみません...直ぐに外してきます。 (2019年6月13日 21時) (レス) id: 34d01c0035 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - 編集画面の関連キーワード入力の下をよく読みオリジナルフラグをお外し下さい違反です (2019年6月13日 21時) (レス) id: 9a44da808d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:すめらぎ しき | 作成日時:2019年6月13日 21時

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