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太陽が近い。汗ばむ肌をぢりぢりと焼いてくる。
ぶちょーは学制服に麦わら帽子姿で、大木に留まるせみに向かって指先をぐるぐるしている。・・・それ、とんぼの取り方やで?

「あぁ!」

ほら逃げられた。しかも、飛びたつ時にオシッコかけられてるやん・・・あーあ。

俺は木陰から出て、首に巻いてたタオルで濡れたぶちょーを拭いてやる。

俺らはたった2人っきりの『帰宅部』。
帰宅するまでを精一杯楽しむのが部のモットー。

「なんでなかなか捕まれへんのかなー」

ぶちょーは心底不思議がってるけど・・・

「・・・なんでやろね」

俺はそう答えて、手を拭いた。

俺・・・大倉タダヨシはこの春この栄斗高校に入った。部活なんてめんどくさいと帰宅部に入ったつもりが、『帰宅部』って部活動があってしくじった。
『帰宅部』は当然学校非公認やけど。

部員は俺と・・・この人・・・「ぶちょー」こと安田ショウタのみ。
ぶちょーは1コ上の2年生。だけど俺よりあたまひとつ分以上小さい先輩は、世間知らずでいろいろ危なっかしい。
俺はいつの間にかぶちょーのお世話係や。

今日の部活は、せみの婚カツ。せみのオスメスをつかまえてカップルを成立させるんやって。・・・なんのこっちゃ。

なんで辞めないのかと聞かれたら、たった2人で辞めにくいってのと、ぶちょーをほっとけないからで・・・。

ぶちょーのこと、ちょっとかわいいと思ってるなんてのは・・・ここだけの話な。

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作者名:松本 | 作成日時:2020年2月2日 21時

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