第三五訓 ページ35
「きよ…、加州くん」
あんた、と真っ直ぐ目を見て言われた女も戸惑うように視線を彷徨わせる。
「あんたのせいで主は泣いた。あんたのせいで主は苦しんだ。あんたのせいで!」
清光の目が潤む。安定も、その前に出た。
「…Aは強い子だから、いつもは何も言わないけど。一度たかが外れてしまえばまるで幼子のように泣くんだよ。…Aの事なんて、一切見て見ぬ振りをしてたあんたは知らないだろうけど」
「…っ、知るわけないじゃない!だって、だって私は…!」
女はぐっと、口を紡ぐ。
握っていた賽子が、誰かの足元へと転がる。
ーーーくるくる
ーーーことんっ
「…だって、私は?…みんなの前で、何を言うつもり?」
それを拾い上げたのは、こんなにも血生臭い場所で聞くには可憐で、綺麗すぎるその声音を吐いた。
ーーー少女。
「………娘か」
岩融の声がりつめる。
「審神者ちゃん、なんでここに…」
Aはそう聞く次郎の横へつく。
「…ごめんね、みんなは私の事心配して黙ってたんだろうけど…これは私が決着をつけなきゃいけない事だからね。…光忠、脅しちゃった」
はは、と乾いた笑いでAは言う。
どんな脅しを…と、まぁそれは帰ってからでもいいだろう。
「久しぶりだね、母様、岩融」
「娘、それ以上主に近づくなよ」
「……そんなに私が嫌い?ああ、そうよね、嫌いよね…だって」
どうして岩融がここまでAを嫌うのか。
光儀の子だからというにしてはーーー、
そう誰もが気づいた時にはもうAは答えを出していた。
「年端もいかぬ小娘に破壊されかけた挙句、刀解されそうになったんだから」
「!」
ざわ、ざわ。
「…どういう意味ぜよ」
Aと一番、ずっと傍にいたはずの陸奥守でさえ困惑したようにしている。
空気は一層、張り詰めた。
「…皆にその事話さなかったんだ。あんたは本当に嫌な女ね、母様。どうして最後の最後に優しくするのかなぁ。…ああ、それか自分の大好きな岩融の評判でも考えたの?」
「小娘ぇっ!!!!!」
岩融はひゅっと息を飲んでその薙刀を振り下ろす。
刀剣たちはAを庇おうとしたが…それには及ばずで。
「相変わらず弱いね、岩融」
ーーーキィィィンッ
鉄の鉛がぶつかり合う、音。
聞きなれた音。
主は、Aは。
小太刀を握り、薙刀を片手で受け止めた。
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黎奈(プロフ) - はじめてコメントさせていただきます!!すごく面白かったです。完結お疲れ様でした!第四訓で宗三左文字が宗山左文字になっていらっしゃるのでご報告させていただきます。あと、ちょこちょこ報告に来るかもしれません… (2015年10月18日 22時) (レス) id: 339ceb4b4b (このIDを非表示/違反報告)
華維璃(プロフ) - お疲れ様でした!とても面白かったです!小説の書き方、参考にさせて頂きます<(_ _)> (2015年9月22日 20時) (レス) id: 5dbf713d35 (このIDを非表示/違反報告)
連合(プロフ) - お疲れ様でした! (2015年7月19日 17時) (レス) id: bbc5de6b90 (このIDを非表示/違反報告)
らい兎(プロフ) - 第三四訓の「突き出ているのは日本の大きな角。」というところもしかして日本→二本でしょうか?面白かったです。 (2015年7月13日 23時) (レス) id: 5d4b050560 (このIDを非表示/違反報告)
零玲飛(れいれと)(プロフ) - お疲れさまでした、面白かったです!宗近のじいちゃんが入手できないのが痛いですね。 (2015年7月10日 19時) (レス) id: 0bd3908221 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:稜 | 作成日時:2015年4月10日 14時