第三訓 ページ3
「大丈夫だった!?何もされなかった？」
「心配性だなぁ」
ロビーへ戻るやいなや飛びついてきた清光を抱き抱えたまま後ろの三人の方へ向く。
自分たちの境遇と重ね合わせたのか、三人は驚いたような、怪訝そうな、そんな複雑な顔をした。
「…主殿、あなたは俺らのことが怖いとは思わないのか」
三日月が口を開く。
きょとん、と首をかしげるとAは可笑しそうに笑った。
「刀だから？神だから？」
「…俺たちの前の主は、俺たちを怖いといった。恐ろしいと言った。審神者になどならなきゃよかった、人殺しの道具など育てなくなかった、と」
「……刀とは、多かれ少なかれ人殺しの道具です。あなたは、怖くないのですか」
三日月と一振の言葉を聞き、Aは清光を降ろした。
そして真っ直ぐに三人を見つめる。
きっと彼らはこうして人と見つめ合うこともしなかったのだろう。
人の愛を知らないのだろう。彼らもまた、怯えてきたのだろう。
ならば教えてやればいいのだ、本当の愛を。
恋や友情、そんな優しいものではない。本当の。
「刀だもの。触れたら斬れてしまうし、今まで何人の人を殺してきたのかと思えば恐ろしい」
「…やはり、あなたも」
「けれど、今の君たちは確かにここに生きている。ただの鉄の塊じゃない。
人の身を借り、ここで確かに生きている」
三人は、息を飲んだ。
殺気ではない、重圧のようなそれを、感じた。
戦場では知らなかった、飾られたままでは分からなかった、それを。
「怖いことなどあるものか。人殺しの道具だってね、人を護れるんだよ。人殺しの道具でも、自分の生き方くらい、自分で変えられるはずなんだよ。
これは命令だ。君たちは、私の為に生きなさい。
私を護り、審神者としての役目を手伝いなさい。
…代わりに私はあなたたちを強く磨くし、愛をあげるから」
信じられないのなら、試せばいい。
許せないのなら、生きてみればいい。
「それでも私の事を信じられないのなら、私を殺してみなさい。審神者という人間に復讐すればいい。私のような年端も行かぬ小娘など、殺すことは容易いでしょうから」
そこまで言って、返事のない三人に向けて苦笑するとAは背を向けた。
「まぁ、君たちは安倍に売られたようなものだからね。出ていきたいというのなら次いきたいところが出来るまで、私のところにいるといいよ。
―――さぁ、帰ろうか」
己の新しい主を見て三人はそれぞれ心に思いつつ、その後を追った。
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黎奈(プロフ) - はじめてコメントさせていただきます！！すごく面白かったです。完結お疲れ様でした！第四訓で宗三左文字が宗山左文字になっていらっしゃるのでご報告させていただきます。あと、ちょこちょこ報告に来るかもしれません… (2015年10月18日 22時) (
レス) id: 339ceb4b4b (このIDを非表示/違反報告)
華維璃(プロフ) - お疲れ様でした！とても面白かったです！小説の書き方、参考にさせて頂きます<(_ _)> (2015年9月22日 20時) (レス) id: 5dbf713d35 (このIDを非表示/違反報告)
連合(プロフ) - お疲れ様でした！ (2015年7月19日 17時) (レス) id: bbc5de6b90 (このIDを非表示/違反報告)
らい兎(プロフ) - 第三四訓の「突き出ているのは日本の大きな角。」というところもしかして日本→二本でしょうか？面白かったです。 (2015年7月13日 23時) (レス) id: 5d4b050560 (このIDを非表示/違反報告)
零玲飛(れいれと)(プロフ) - お疲れさまでした、面白かったです！宗近のじいちゃんが入手できないのが痛いですね。 (2015年7月10日 19時) (レス) id: 0bd3908221 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：稜 | 作成日時：2015年4月10日 14時
