柱の少女は、狙われ体質。弐

伍拾漆【霞柱の好きなもの】 ページ9

炭治郎達は蝶屋敷に戻った。







炭治郎は特に重症だったし。
彼はしのぶさん達に任せた方がいいと思うから。


私は蝶屋敷へは行かない。だって、あそこへ行ったら優しいしのぶさんやカナヲに甘えてしまう。煉獄さんを喪ってうちのめされている私に声をかけてくれるに決まってる。



でもそれじゃだめ。自分で切り替えていかなきゃ



それに、私はすぐに任務に行かなければならない。私は怪我と言っても擦傷と打撲程度だった。だから、藤の花の家で軽く治療させてもらうつもりだ。

長いこと自分の屋敷に戻れていないことが気がかりだけど、優秀な侍女達がいるから大丈夫なはず。









『こんにちは、鬼殺隊・宙柱の蒼天と申します。数日の間、こちらで療養させて頂いても宜しいですか？』








すると、とても礼儀正しいお婆さんが快く了承して、案内してくださった。









お屋敷の中を一通り案内してもらって、部屋へ向かう。

何も考えずぼーっと廊下を歩いていると、角から歩いてくる人にぶつかりそうになった。

『うわっ！』

咄嗟に後ろに飛びのく。




顔をあげると、同じくぼーっとした顔の無一郎くんがいた。

時透「…………」

『あ、え…え？』

無一郎くんは私がいたことに気がついていたのだろうか？



そのまま厠の方へ行ってしまった。




えぇ……


なんだったの無一郎くん。え、私無視されたの？

それとも幻だったの？無一郎くん……分からないよ……







私はもやっとした心を抱えながらも案内された部屋に入る。

明日は一日休んで、気持ちの整理をつけよう。


煉獄さん……

「胸を張って生きろ」という彼の声がまだ耳に鮮明に残っている。そうだ、私にはやらなきゃいけない事が沢山ある。悲しんでいる暇はない。



頭では色々考えていても、身体は素直だった。疲労のあまり寝床につくと、すぐに意識をうしなった。

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