捌拾肆 ページ37
…………。
ここは……。
懐かしい、たくさんの種類の薬の匂い。それに藤の花の香りもする。
私、帰ってこれたんだ。
ゆっくりと目を開ける。
少し首を動かして左を向くと、座ったまま小さく規則正しい寝息をたてるしのぶさん。
私の腕には点滴の管が幾つか繋がれている。
それが外れないようにそっと体を起こした。
筋力の衰えはあるものの、怪我も殆ど完治しているから、問題はないと思う。
『……しのぶ…さん』
私は呟いて、彼女の手を握る。
するとしのぶさんはパチッと目を開け、私と目が合うと数秒フリーズした。
胡蝶「Aさんは……いつも一人で突っ走って行ってしまう。でも、ずっと信じて待ってたんです。だけど、本当は……本当は姉さんの時みたいにもう会えなくなってしまうのではないかって……怖かった。」
しのぶさんは握った私の手に力を込めながら、本心を語ってくれた。
『しのぶさん……心配かけてごめんね。でも、信じてくれてて、ありがとう。』
しのぶさんは呆れたように、はぁ、と軽く息をついた。
それからまた私に向き直って
「全く、仕方ないですね」
と、ふわっと綺麗に微笑んでくれた。
しのぶさんのなんとも美しい笑顔に、ほへーっと見とれていた。
「いいから早く横になってください。貴方は病人だってこと、忘れないでくださいね?」
『あっ、はい。』
私は大人しく体を戻す。
胡蝶「あ、お隣にも寝てる人いますので、お静かに、まだ早朝ですからね。Aさんが目を覚ましたことは私が後で皆さんに伝えておきます。」
しのぶさんは圧を感じる笑顔を浮かべて部屋から出て行った。
妙に静かだと思ったららまだ早朝だから皆起きていなかったのか。
アオイ達が起きてきたら騒がしくなりそうだ。けど、彼女達の顔が早くみたい気もする。
あ、それよりも怪我人が隣にもいるって言っていたような……?
今度は右側に体を向けるとそこに居たのは……
『た、たた、たたた炭治郎!?』
騒ぐなと言われたそばから大声で叫んでしまい、しのぶさんから視線が痛い。
1390人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
渚月華 - 面白いです! (2020年5月2日 11時) (レス) id: bd22a3d64d (このIDを非表示/違反報告)
氷壊寺礼(プロフ) - 何…?!「既に投票済みです」だとぉ… (2020年4月11日 21時) (レス) id: ecbea78122 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりなんぽん - どうもです。ココさんの言う通り「舞」ではなく「雛」です。更新お忙しいと思います。誤字脱字は他の読者様が気になる方がいらっしゃると思いますので一応指摘してきます。すいません。 (2020年4月11日 19時) (レス) id: 3ac698d03c (このIDを非表示/違反報告)
ココ(プロフ) - とても面白いです!宇随さんのお嫁さんの名前は雛鶴さんだと思います! (2020年4月9日 19時) (レス) id: f80ae667a5 (このIDを非表示/違反報告)
ろんちゃん - 面白です!これからも更新頑張ってください! (2020年4月9日 18時) (レス) id: fc640f7e8a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:なるは。 | 作成日時:2020年2月22日 22時