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雪が融け、徐々に暖かくなる中、木に地面に新芽が静かに芽吹いていく。
やがてすっかり暖かくなり、若葉萌ゆる春が巡って来た。
すう、と吸い込むその空気の中にさえ、命の匂いが満ちているかの様。
春に生えるは草木だけではない。
獣も鳥も、等しく命を栄えて春を寿ぐ。
私は香しき春の喜びに、鳥たちが歌うのを聞く。
生めよ栄えよ歌え舞えと、人には知られぬ鳥たちの歓喜の歌を聴きながら、私も声高らかに歌う。
貴君に教わった歌を。春の歌を。
私の歓喜が、鳥たちにも伝わるのかな。
小さな庭に生える木に家の屋根に、地面に、鳥たちが集まって共に歌ってくれる。
鶯が柔らかな声で歌えば、目白が愛らしくさえずる。
雲雀、雉、燕、空に地面に軒下に。
皆が皆、歌う。
春を、命を。
ふと、貴君が手を止めて私を見ているのに気づき、私は歌うのを止めた。
鳥たちが一斉に羽ばたいて、去って行った。
羽毛の舞い散るなか、私は貴君の視線を感じる。
ああ、今の光景を、貴君はどう思ったのかな。
おかしな娘だと、思われてしまったかな。
変わらず妻と、思ってくれるのかな。
「綺麗な声だね」
貴君が言った。
その言葉にどれだけ私の心が震える事か。
嬉しくて、嬉しくて。
あなたと居る為に、ただその為だけに、この体は在る。
この声も何もかも、全てが。
だから貴君がこの声を愛でてくれるなら、それは何よりもの幸せ。
でも。私は目を伏せる。
「いつか、綺麗な声が出なくなっても、それでも、私を愛してくれますか？」
怖い。貴君が愛でて下れるこの声は、神様があなたの傍にいるために下れたもの。
それを失っても、貴君は私を愛してくれるのかな。
「当たり前だよ」
そう言いながら、貴君は優しく笑う。
そっと伸びてくる手が、大きな手が、私の頬を撫でる。
その温もりがあまりに愛しくて、私は貴君の手に私の手を重ね、頬を寄せた。
ああ、どうかいつまでもこの時が続いてくれますように。
幸せで、幸せ過ぎて、怖いんだ。
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夢美 - 絵凄く上手でした。 (2019年8月1日 11時) (
レス) id: 32185305c0 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち - 鶴の恩返しですか？面白かったです！！！ (2018年11月27日 21時) (レス) id: afa6322ad5 (このIDを非表示/違反報告)
ｎｏｔリア充 - 絵が凄い上手ですね！お話しも凄く良かったです。黒彩良いですね最近は上彩ですがやっぱり黒彩も捨てがたいなあ (2018年11月24日 19時) (レス) id: fb8a1e68c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：琥珀 | 作成日時：2018年11月23日 18時
