気付いた恋は、〈ksk〉 ページ17
「･･････あま」
思わず顔をしかめて、フォークをテーブルに置く。白い皿の上に箱から出したときと大差変わらないその見た目に、溜め息をつく。
いっそのこと、ショートケーキの上に乗っているイチゴだけ食べてやろうかと思ったが、口の中に残る甘ったるい感覚がその考えを吹き消した。
甘いものが苦手なのに買ってきたケーキ。何故買ってきたのかと問われれば、答えをスラスラと言えることはないだろう。
『甘いもの、好きなんだよねー』
そう言いながら、ブラックコーヒーを飲む彼女。今思えば、甘いものなんて食べていなかった気がする。
『フワフワ、しててさ』
こんなことを言った後、君は、ボソッと『吐き気がする』と言って─────
「あ、」
ここまで思い出して気がついた。
俺が彼女の好きなものを無理して食べるように、彼女もまた、別の誰かの好きなものを無理矢理『好き』だと言っていることに。
俺は、彼女の好きなものなんて知らないことに。
「･･････馬鹿じゃねーの」
誰もいない部屋に、俺の声がよく響く。その声は俺の声のはずなのに、違う人のものに聞こえてしまって。その言葉は、自分で放ったはずなのに、心をえぐられるような痛みに襲われて。
好きな人が何かを『好き』だと言う度に、ドキドキしてしまっていた。好きな人が笑顔になる度に心臓が飛び出るほど音が鳴った。
それほどに、好き、『だった』んだ。
「え、あ、うそ、だろ」
目から涙が溢れて･･････ケーキの上へ、零れた。まるで、甘いケーキに違う味を付けるように、一粒。また、一粒。止まることを知らないかのように、まるで流れることが当たり前かのように、涙は流れる。
ケーキにフォークを突き刺して、口に運ぶ。甘さが口に広がる。いつもならここでフォークを置くけれど、今の俺は、次の一口を食べていた。
気づいてしまったから。叶わない恋だと。
気づいてしまったから。敵わない恋だと。
「･･････あ、」
何も考えずに食べていたら、最後の一口を口に運びかけていた。
一瞬の迷い。
これを食べれば、あの子への思いも断ち切ることができて、また別の恋に進める？本当に？流した涙の分だけケーキを食べれば、また一緒じゃないか？いや、きっと、
「･･････ごちそうさま」
あの子の恋も、叶わない。
〈気づいた恋は、〉こーすけ
ーーーーー
夢主の好きな人も、また誰かに恋をしている、ということです。分かりにくくてすみません。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 29人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ふらわぁ(プロフ) - エティシアさん» ありがとうございます！読んでくださるだけですごく嬉しいです。元はといえば話を思い付かない私が悪いので･･････更新は遅いですが、楽しみにして頂けると嬉しいです！！エティシアさんのコメントで頑張れます！ (2020年3月16日 11時) (
レス) id: bd0b8806a1 (このIDを非表示/違反報告)
エティシア(プロフ) - 1話で終われるようなリクエストが思いつかなかったので書けませんでしたが、いつも小説楽しみにしています。何もお手伝い出来ませんがこれからも頑張ってください！ (2020年3月15日 1時) (レス) id: 910526fed8 (このIDを非表示/違反報告)
ねむりねこ(プロフ) - コメ返ありがとうございます！！楽しみにしています！ (2019年11月7日 20時) (レス) id: b1690d9a63 (このIDを非表示/違反報告)
Tiger Flower(プロフ) - ねむりねこさん» コメントありがとうございます！嬉しい、めっちゃ嬉しいです！！一応言っておきますが、ふらわぁとTigerFlowerは同一人物です笑これからも見ていただけたら嬉しいです！ (2019年11月7日 20時) (レス) id: e40e961212 (このIDを非表示/違反報告)
ねむりねこ(プロフ) - 初めてまして！どれもこれも素敵過ぎますっ！応援してます！更新頑張って下さいね！！！！ (2019年11月7日 20時) (レス) id: b1690d9a63 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ふらわぁ x他1人 | 作成日時：2019年9月20日 22時
