花笑み Ⅲ (ページ8)

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fk「なんでそんなこと言ったの！！」

「んー、早く大人になりたいなぁって」

ふっかさんの言葉にそう返すと、
羽交い締めにしている腕の力が、少し弱まった。

ab「急がばまわれ、だよ」

目の前の阿部ちゃんが、
急に真剣な顔をしてそんなことを言った。

そしてすぐにいつもどおりの笑顔に戻って、
「ラウは何のお酒が好きかなぁ」と
みんなにも聞こえるように言う。

dt「個人的にはワイン飲んでほしい。
　このビジュアルにワインは画になるよ」

nb「以外と下戸だったりして」

kj「ラウはいつまでもカクテルでええよ」

mm「ビールはのどごし、だな」

メンバーがそれぞれいろんなお酒の名前を出し始めたけど、
僕はいまいちついていけない。

ab「…ラウールは、
　どんな大人になるのかな」

騒がしくいろんな言葉が飛び交う中、
阿部ちゃんが独り言のようにそう呟いたのが聞こえた。

思わずその顔を見る。

切なくて、少しだけ悲しそうな顔をしていた。

「阿部ちゃん、」

咄嗟に、机の上に乗っていた彼の手を上から包んだ。

自分の方が年下だけど、
その手は僕よりも小さくて、華奢だ。

僕の両手にすっぽりと収まってしまう。

ab「どした？」

僕がさっきの発言を聞いていたなんて、
思ってもいないんだろう。

何食わぬ顔で僕を見て、
相変わらず優しく微笑んでくれる。

「成人式、来てね」

何の脈略もなくそんな事を言うのは的外れだと思うし、
残酷な言葉だったと思う。

阿部ちゃんは決して頷かないと分かっていた。

だけど、

ab「うん、絶対行く」

阿部ちゃんはそう言って、
ふわりと笑ってみせた。

どんな思いで、阿部ちゃんはそう言ったのだろうか。

…やっぱり僕は、
この悲しすぎる現実を、受け入れられそうにない。